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「交渉人」★★★★

交渉人 特別版 [DVD]

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 日曜日に地上波で放映されていたのを鑑賞しました。こういう類の映画はストーリーに違和感を感じた瞬間に興醒めしてしまうのですが、この作品は説得力のあるストーリー仕立てで、観る者を最後まで惹き付けるものでした。

 人質交渉に長けた警官のローマン(サミュエル・L・ジャクソン)は、同僚から年金基金の横領疑惑の話を打ち明けられたが、それからまもなく、その同僚は何者に射殺される。その現場に居合わせたローマンに対し、内務捜査局は殺人と横領の嫌疑をかける。ローマンははめられたのだった。
 ローマンは自らの濡れ衣をはらすため、内務捜査局に押し入り、局長のニーバウムその他の職員を人質に立てこもる。そしてローマンは自らの交渉相手としてセイビアン(ケヴィン・スペイシー)を指名する。

 セイビアンはねばり強い交渉によって犠牲者を出さずに事件を解決することを誇りにしていた。しかし、セイビアンは交渉の権限を握るものの、それを面白く思わない他の警察官らは、セイビアンのやり方に不満を抱く。そしてセイビアンの意思に反して強攻策が試みられるが、その結果、ニーバウムは警官の発砲によって命を落とす。実はニーバウムは横領の真犯人である警官らから買収されており、故意に殺害されたのだった。こうしたやり方に反発したセイビアンは交渉役を解任されてしまう。そしてセイビアンはローマンの下へ向かう。

 ローマンは強行突入の際、セイビアンの助けも借りながら、横領疑惑の鍵があると思われるニーバウムの自宅へ向かった。そこにローマンを追って駆けつけた横領の黒幕は、ローマンを殺す前にローマンに対し横領を打ち明けるが、その会話はすべて無線で筒抜けだった。黒幕は逮捕され、ローマンの嫌疑ははらされる。。。。


 確かにローマンの潔白は証明されたのですが、ビルに人質を取って立てこもった罪はどうなるのか?という疑問は残ります。まぁそれはさておき、この作品における登場人物たちの行動には説得力があります。長年の警察官としての功績が無に帰される危機に直面したローマンがとった行動、セイビアンのローマンに対する毅然とした態度、そしてセイビアンが次第にローマンに共感していく過程、いずれも見ていて違和感を感じることはありません。だからこそ、最後まで観る側の緊張感が緩むことがなく、最後まで思わず惹き付けられてしまうのです。

 こういう映画は些細な違和感で緊張感がとぎれてしまった瞬間に、映画としての面白みが吹っ飛んでしまうのですが、この作品は決してそういうことがなく、ハリウッド的な映像の迫力と充実したシナリオがうまく融合している気がしました。