昨日はシダー・ウォルトンのライブをコットン・クラブで鑑賞してきました。昨年末から最も心待ちにしていたライブの一つです。
シダー・ウォルトンといえば、村上春樹氏が『意味がなければスウィングはない』の中で大きく取り上げ「マイナー・ポエト」と称したピアニストです。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/12/04
- メディア: 文庫
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年齢やスタイルを問わず、今現役で活躍しているジャズ・ピアニストのうちで、いちばん好きな人を一人あげてくれと言われると、まずシダー・ウォルトンの名前が頭に浮かんでくるわけだが・・・」
と言ってしまうくらいですから、相当の入れ込みようです。
ずどんとした図体から伸びる手の指先で繊細に奏でられたピアノから繰り出される音は実に弾んでいました。決してダイナミックな演奏とはほど遠いのですが、しかしながら抜群にスウィングする演奏法は、他に類似のピアニストを見たことがありません。シダー・ウォルトンならではの独特な音づくりなのです。
ベースやドラムのソロの合間に、めがねを拭き拭きしながらも、キーを併せるようにちょんちょんとピアノを弾く光景がしばしばありましたが、わずか一つの音なのに曲全体の雰囲気を決定してしまうほどの力を持っているのです。さすがジャズを知り尽くした大御所です。
私が見た最後の公演では、♪ウゲツ、♪ボリビア、♪ホーリー・ランドといったオリジナル曲から、♪サテン・ドールまで幅広い演奏が繰り広げられましたが、シダー・ウォルトンは意外に良い作曲家であることも痛感しました。どれも印象的な旋律のメロディーで、シダー・ウォルトンの演奏方法にマッチしたリズミカルな曲です。これらの曲は他のミュージシャンたちも多く取り上げて演奏しているようですが、日本の若手ミュージシャンたちがオリジナル曲と称して乱造するごちゃごちゃした曲とはわけが違います。
それにしても、こういうある意味地味な大物のライブに多くの若者が駆けつけて熱狂しているのは、意外でした。最終の公演ということもあってか、コットン・クラブはほぼ満員でしたが、その大半は20代から30代前半くらいの若者でした。
日本のジャズ・ファンの質の高さも感じたライブでした。