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「フレンジー」★★★★☆

フレンジー [DVD]

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 久々のヒッチコック映画です。じわじわと迫ってくるような底知れぬ迫力は相変わらずです。

 ロンドンではネクタイによって女性を絞殺する事件が頻発していた。
 短気なブレンダ(バーバーラ・リー・ハント)は、働いていたパブのマスターと喧嘩をして店を辞める。無職となったブレンダは、結婚相談所を経営している前妻のもとを訪ね、その晩、一緒に食事をする。翌日、ブレンダの前妻に気を寄せるブレンダの友人のラスクが前妻のもとを訪ね、ネクタイで絞め殺してしまう。ブレンダはその後前妻の事務所をたまたま訪れたところを秘書に目撃されたため、容疑者となってしまった。

 ブレンダは元働いていたパブの店員のバブスと行動を共にするが、そのバブスもネクタイで絞殺されジャガイモを運送するトラックの荷台から転げ落ちたところを発見される。これもラスクの仕業であったが、ブレンダに嫌疑がかけられた。

 ブレンダはラスクが連続殺人犯であることを知らずに、友人であるラスクのもとを訪ね、かくまってもらうことにした。しかし、ラスクはブレンダの所在を警察に知らせた。しかも、絞殺された女性の所持品をブレンダの鞄に詰め込み、ブレンダの嫌疑をますます強めた。

 ブレンダは獄中で無実を訴え続け、ラスクへの復讐を誓っていた。ある日ブレンダは隙を見て階段から転げ落ち、病院に入院した。そして、病院から抜け出し、ラスクのもとへ復讐に向かった。

 ラスクの自宅にたどりつくと、ベッドには新たな犠牲者が横たわっていた。ラスクは死体を運ぶ鞄を取りに出かけていたところだった。そこには、ラスクが真犯人であると気づいた警察官も駆けつけていた。そこに、死体を運ぶ大きな鞄を抱えたラスクが帰ってきたのだった・・・。


 どう見てもブレンダが犯人であるという状況証拠が次々と積み重なっていき、ブレンダがじわじわと追いつめられていく様は、さすがヒッチコックならではの演出です。自分の身をその立場に置いて見ると、背筋が凍るような思いがします。

 また、この作品でもヒッチコックの映像技術が随所に生かされています。ラスクがバブスを自分のアパートに連れ込むシーンの後、カメラがアパートの入り口からスーッと引いていくシーンは、実際に絞殺のシーンがなくても、部屋の中で何が起こっているかを見る人に伝えるものであり、それがまた不気味さを助長させる効果があります。

 ラスクが被害者を殺害し、トラックの荷台に積んだ後、自分のピンがなくなっていることに気がつくシーンも、殺害を回想するシーンでストップモーションが次々に繰り出され、ラスクのあせりが見る側に効果的に伝わってきます。

 ヒッチコック映画の中でもかなりレベルの高い作品だと思います。