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衆議院選挙の結果を見て

 事前の大方の予想どおり、選挙結果は民主の歴史的圧勝に終わりそうです。前回の郵政選挙に比べると極めて大きく振れたわけですが、小選挙区制度というのはこういう振れ方をするというのは、諸外国の歴史で経験済みです(かつて1993年のカナダの選挙では、与党が改選前の169議席のうち167議席を失ったとのこと)。

 この結果については、主観を入れて述べることは極力避けたいと思いますが、今回の自民党の敗因はやはりここ最近の総理大臣の資質によるところが大きいと言えるでしょう。そうした総理大臣を選んだのはもちろん自民党自身であるわけですが、問題は自民党が総理大臣を選ぶプロセスにあるのだと思います。ここ最近の自民党の総裁は世論調査の結果に基づいて選ばれているといっても過言ではありません。それはもちろん、小泉純一郎氏の元で楽な選挙を戦えたという過去のノスタルジーに寄っかかっているからです。郵政選挙が証明したように、国民的人気が高い人物さえ総裁に据えておけば、労少なくして選挙に勝てるのです。

 しかし、世論調査に基づいて総裁を選ぶというのは、極めてリスキーな面を持っています。安倍総理北朝鮮問題での対応で国民的人気を獲得したわけですが、結果的には総理の資質やリーダとして不可欠な「人を見る目」を備えていなかったことが露呈し、周辺をお友達で固めてしまったことが遠因となって、結局自民党参議院選挙で歴史的敗北を喫し、参議院での過半数を失ってしまいます。その後の福田総理も官房長官での対応が何となく評価されて総理に担がれましたが、結局半ば開き直って政権をほっぽり出してしまったわけで、これも総理としての覚悟に欠けていたわけです。そして、麻生総理はもともと失言癖が知られていたにもかかわらず、これも一時的な国民人気にあやかる形で総裁に選ばれてしまったわけです。

 つまり、自民党は、誰が日本の総理にふさわしいかを真剣に考えず、安易に世論調査に頼って一国の総理大臣を選出するようになってしまったわけで、そのツケを今回の選挙で自民党自身が受けているのです。

 これは小泉純一郎氏にも大きな責任があるような気がします。いかなる組織でもそうですが、リーダーがやらなくてはならない重要な責務のひとつは、自分の跡を継ぐリーダーの候補を育てることにあります。ところが小泉氏はそれを安倍晋三氏に託してしまった。それが、参議院での過半数割れを招き、自民党の安定的な政権運営を不可能にしてしまったわけです。しかも小泉氏は安倍氏以外の後継者の候補をつぶしてしまった面もあります。

 そして、今回の選挙で大ダメージを受けたのは、何と言っても公明党でしょう。幹部が軒並み落選という結果で、解党的なダメージと言ってもよいのではないかと思われます。長年自民党総理を支え政権に入ってきたわけですから、やむを得ない結果でしょう。


 これからは民主党政権の時代がやってきます。私は民主党政権になっても決して大きな混乱が起こることはないと思っています。官僚組織も政権交代の経験は既に持っているわけで、前回とは違って政権交代に比較的スムーズに対応していくのではないかと思っています。民主党マニフェストも出されており、大きな政権の方向性に基づき頭の体操はできています。民主党の幹部の中にも官僚組織の使い方や動かし方に熟知している人たちは数多くいます。

 わが国の二大政党制は大きな思想対立でもなく、政策の内容もどちらが右か左か分からないような部分もあったりするわけです。だから官僚の立場としては、どちらの政党が政権に着こうとも、思想的な葛藤というのはほとんどありません。

 いずれにせよ、一役人の立場としては、今回の選挙結果が国を良くする方向に働いていき、そうした流れに役人の立場から少しでも貢献できればよいということのみです。