アメリカという国はやはりジャズに一目置いているようです。
先日のニューヨーク・タイムズの記事に、ミシェル・オバマがホワイト・ハウスにジャズを学ぶ学生たち150名を招いたという記事が載っていました。
http://www.nytimes.com/2009/06/16/arts/music/16jazz.html?ref=music
「ジャズ・スタジオ」と名づけられたこのプログラムに登場した講師の一人が、ウィントン・マルサリスです。彼は村上春樹氏が『意味がなければスイングはない』の中で
「どうしてウィントン・マルサリスの音楽はかくも退屈なのか」
とこき下ろした人物です。
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「このオーケストラの音楽には、頭のいい大学院生がすらすらと書きあげた優秀な学術論文みたいなところがある。」
「・・・生真面目さ、口数の多さ、自信過剰、コントロール好き、お勉強好きというこの人の性向・・・」
などと表現しているのですが、ホワイト・ハウスのこのイベントにおいても、ウィントン・マルサリスは、饒舌さを発揮していたようです。
例えば、次のようなアドバイス。
The advice: never slink off looking mad at yourself after your solo, don’t abuse the rhythm section and play shorter.
「自分自身に怒っているように見えるからソロが終わった後こそこそと逃げるな」
得意げになってしゃべっているマルサリスの姿が目に浮かぶようです。
ところで、ミシェル・オバマがジャズについていいことを言っています。
In her four-minute speech, Mrs. Obama brushed across two well-known thoughts about jazz — that it “may be America’s greatest gift to the world” and that “there is no better example of democracy than a jazz ensemble”
「ジャズはアメリカの最も偉大な世界への贈り物だ。ジャズのアンサンブルほど民主主義のよい例はない。」
ジャズはアメリカが生んだ唯一の文化と言われることが多々ありますが、古き西洋の音楽の常識を打ち壊して発展してきたジャズは、アメリカ人にとっては自由の象徴であるとも言えます。また、アフリカ系アメリカ人の中から生まれてきたジャズは、アフリカ系アメリカ人にとっても誇りである音楽です。ジャズはシカゴにおける幼少時代の一部だったというミシェル・オバマがジャズに対して贈った讃辞には、こうした歴史が刻み込まれています。
政権の中枢の建物の中で、聴衆たちがみんなでディジー・ガレスピーの「Salt peanuts」を叫ぶなんて、アメリカ政府もなかなか「開かれたホワイトハウス」のアピールがうまいなという気がしてしまいます。