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「真昼の決闘」★★★★

真昼の決闘 [DVD] FRT-031

真昼の決闘 [DVD] FRT-031

 アメリカ西部の町を舞台にした復讐劇です。

 この町で保安官を務めるウィル・ゲイン(ゲイリー・クーパー)は、若いエミイ(グレイス・ケリー)と結婚式を済ませ、明日には保安官を退任する予定だったが、そこに、かつてウィルが刑務所行きにしたミラーが保釈され、この町に向かっているとの情報が入ってきた。ミラーが帰ってくれば、必ずやウィルに復讐することは明らかだった。

 ミラーは手の着けようのない悪党で、ミラーがいた頃は町の人々は安心して生活を送ることができないでいた。ウィルの頑張りでようやく町に平穏がもたらされた。にもかかわらず、ウィルが助けの手を求めても、誰しもが協力を拒んだのだった。結婚したばかりのエミイさえも、ミラーが到着する寸前に町を出ようとしていた。

 絶望に駆られたウィルは、1人でミラーと対決することを決意する。ミラーは予定の列車でやってきて、すぐさまウィルへの復讐のために町に向かった。ミラーの一派とウィルは激しい銃撃戦を繰り広げる。ウィルが追い込まれたと思われたそのとき、町を出る直前で思いとどまって戻ってきたエミイが銃撃に加わり、かろうじてミラーをやっつけることができた。

 銃撃戦が終わると町の人々は家から続々と外に出てきた。それを尻目に、ウィルとエミイは馬車で町を後にしたのだった・・・。


 最後の終わり方が何とも殺伐としていて、何とも救いようのないような後味を残します。町の人々の無節操ぶりに対する苛立ちが残り、町の平穏のためにがんばった保安官に対するこんな仕打ちはあまりにもひどいではないかという気がしてしまいます。この作品には、大衆の欺瞞に対する怒りがこめられているとしか考えられません。

 この作品が作られた当時、アメリカ社会はマッカーシズムが席巻していました。一旦共産主義者というレッテルを貼られれば、周囲の人たちは急によそよそしくなったわけです。そうした風潮に対するアンチテーゼとしてこの作品が撮られたというのは極めて説得的な説明です。

 興味深いのは、この映画は政治リーダーたちに人気があるということです。
 例えば、アイゼンハワー大統領はこの映画を3回見ていたようですし、クリントン大統領も少なくとも20回はこの映画を見ているようです。さらに、日本の小泉元首相もこの映画のファンなのだそうです。
http://www.brightlightsfilm.com/47/highnoon.htm

 時には孤独を選択しなければならない政治リーダーたちにとって、この作品は極めて共感できるということなのでしょうが、それぞれの政治家がまちまちの正義感に基づいてこの映画に自らの姿を投影しているというのが面白いところです。