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「レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―」★★★★☆

http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD14048/index.html
 PartIに続き、PartIIも期待を裏切らない完璧な出来映えでした。曹操の80万の軍勢と対峙した5万の軍勢の劉備軍と孫権軍が、どのような戦略によってこれを撃退するかが見ものです。

 曹操は自分勝手な征服欲と小喬に対する愛情のために、劉備軍と孫権軍を攻めようとする。蔓延した疫病で死んだ自分の軍兵の遺体を対岸の劉備孫権軍の下に送り流すなど、卑劣な手も拒まない。

 孫権のやんちゃな妹の尚香は、男の兵士に扮して敵陣に紛れ込み、敵陣の陣形を詳細に伝えることに成功する。

 また、劉備軍は、一旦、孫権軍から別れて兵を引いたように見せかけるが、実はこれも策略で、曹操を油断させるのに成功する。

 さらに圧巻なのは、火攻めの戦法だ。風向きによって火攻めがどっちに有利になるかが変わってくるのだが、曹操は風向きを読める有能な部下をことごとく処刑してしまった。他方、劉備軍の軍師・諸葛孔明は、ある時点を境に風向きが反対向きに変わって、自分たちに有利になることを見抜いていた。そのためには、曹操からの攻撃の時間を遅らせるしか方法がない。これを漏れ聞いた小喬は、自ら単身で曹操の下に飛び込んでいき、曹操の作戦のタイミングを遅らせることに成功する。こうして、劉備軍と孫権軍は、火攻めによって見事、曹操の大軍を撃退したのだった。

 この映画の一番のメッセージといえば「戦争に勝者はいない」ということでしょう。劉備軍と孫権軍は確かに曹操の大軍を撃退しましたが、そのための犠牲も大きかったわけです。孫権の妹の尚香は、敵陣に潜り込んだ際に自分を助けてくれた田舎から出てきた若い兵士に戦場で再会しますが、そのとき、彼は刺されて命を落とし、尚香は悲嘆に暮れる、という場面は大変印象的です。

 それにしても、歴史上の物語をこれだけダイナミックに再現した映画というのは見たことがありません。日本の戦国時代を映画化しても、何か時代劇に毛が生えたような感じで終わってしまうのがオチですが、これだけの迫力ある映像を使えば、立派な現代のエンターテイメントです。岩代太郎の音楽も最高で、中国の昔のテイストを織り交ぜたスケールの大きな現代音楽に仕上がっています。

 本当に素晴らしい映画でした。