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「ザ・バンク 墜ちた虚像」★★★★

http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD14219/index.html
 武器取引に暗躍する国際銀行IBBCの裏側を暴いていくというストーリーの映画です。

 インターポールは、IBBCの裏側を知る人物から、IBBCの武器取引の内部情報を知る人物と接触するチャンスを掴んだが、接触したインターポール捜査官は謎の死を遂げる。接触した相手はIBBCの元武器取引責任者であったが、その人物もIBBCの手によって変死する。

 長年IBBCの不正を追っていたインターポールの捜査官サリンジャークライヴ・オーウェン)は、ニューヨーク検事局のエラ(ナオミ・ワッツ)と手を携えてIBBCを追いつめていく。IBBCは、途上国の武器資金の流れを押さえることによって、その政権を借金漬けにして、権力を手にしていたのだった。その秘密を知る者は次々と不慮の死を遂げていく。

 IBBCと武器取引交渉を進めていた武器製造会社の社長も、選挙演説中に狙撃されて命を落とす。その狙撃犯はIBBCが雇った狙撃手であったが、サリンジャーとエラはその狙撃犯の義足の足跡からその人物を特定し、追跡する。そして、IBBCの関係者で元東ドイツの共産主義を支えていた人物がグッゲンハイム美術館で狙撃犯と接触する場面を押さえる。そこで激しい銃撃戦が始まる。

 やがて、IBBCは取引相手にはめられ、武器取引に失敗し、転落していく・・・。


 この映画の見所は何と言ってもグッゲンハイム美術館での銃撃戦です。螺旋状の構造の空間で繰り広げられる銃撃戦の迫力は、他の映画では類を見ないほどよくできた場面です。

 そして、映画中のIBBCという銀行は、実在の銀行IBBC(Bank of Credit and Commerce International)をモデルとしているようです。WIKIPEDIAによれば、IBBCはルクセンブルクに拠点を設け、ピーク時には78の国々で400の支店を設け、200億ドルを超える資産を持つ世界第7位の民間銀行だったようです。数々の武器取引に暗躍し、CIAの作戦も支えていたとされており、多くの独裁政権が資産隠匿に利用していたようです。

 映画自体、ストーリーはよくできており、銃撃シーンなどそれなりにスリル感もあって、楽しめるものとなっていたように思います。

 ただ、IBBCという銀行を激しく糾弾しているものの、IBBCが世界の途上国で具体的にどんな悪事を働いていたのかをもっと克明に描いていたら迫力があったのではないかと思います。また、武器製造企業に対する批判的視線がやや欠けていたかなという気がしなくもありませんでした。

 さはさりながら、世界中を舞台にした壮大なスケールの映画は、シーンの移り変わりだけでも楽しめます。ドイツ、フランス、ニューヨーク、そして再度はトルコへと飛び回るスケールは、やはり巨大なスクリーンでこそ堪能すべきという気がしました。