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Charito@Body&Soul

 やや久しぶりにチャリートのライブに足を運びました。大石学(pf) 坂井紅介(b) 広瀬潤次(ds) 鈴木央紹(ts)というラインナップだったのですが、これがまた大変素晴らしい組み合わせで、正にパーフェクトのステージといったところでした。

 チャリートにとっては、今年はフランスの音楽会の大巨匠ミシェル・ルグランとの共演アルバムの発売を果たし、とても波に乗った1年だったわけですが、そんな1年のラストを飾るのにふさわしいステージを見せてくれました。

 曲目は、ミシェル・ルグランとの共演作からの選曲がやはり多く、「Watch What Happens」「Summer Me, Winter Me」「How Do You Keep The Music Playing」「The Summer Knows」「I Will Wait For You(シェルブールの雨傘)」など、素晴らしいメロディー・ラインの曲が次々と演奏されていきました。それから、ガーシュインの名曲「Someone To Watch Over Me」もとても素晴らしい演奏でした。

 それにしても、今回のメンバーはどの方を取っても素晴らしい役者揃いでした。

 ベースの坂井紅介の演奏を聴くのは今回が2回目ですが、前回と同様安定感のある素晴らしい演奏でした。この人がいるだけでバンドのリズムが格段に安定してまとまるという存在です。チャリートのMCによれば、この方はミシェル・ルグランの信頼が厚く、ルグランが来日する際にはいつも共演されている方とのことです。ルグランは気性が激しい方のようで、好き嫌いも激しいようなのですが、そんなルグランの高い信頼を得ているというのも大変納得がいきます。

 それからドラムの広瀬潤次も非常にスピード感のあるリズムを微塵の狂いもなく刻んでいました。中でも「Caravan」の演奏は圧巻で、彼の独壇場のような感じさえ漂っていました。しかしながら、この広瀬潤次の素晴らしさは、スローテンポの静かなバラードでもっとも発揮されているような気がしました。ステージはまずピアノ、ベース、ドラムの静かな演奏で始まったのですが、この人のブラシの使い方は本当に絶妙です。バラードの演奏はドラマーのブラシの使い方にすべてがかかっているといっても過言でないくらい、ブラシの使い方は重要です。ブラシが少しでも自己主張を始めると耳障りとなり、せっかくのバラードの雰囲気もぶちこわしです。今回のドラムの演奏は、出しゃばり過ぎることもなく控えめで、本当に心地の良いものでした。

 そして、中でも素晴らしかったのは、テナー・サックスの演奏でした。ヴォーカルのステージではあまりホーンが入ることは少ないのですが、今回は、鈴木央紹(ひさつぐ)というテナー・サックス奏者がメンバーに入っています。チャリートのヴォーカルと打ち消し合うのを少し危惧していたのですが、ヴォーカルの時は控えめに、そしてソロになると抜群のセンスの良さを見せつける演奏を全面に出すといった感じで、実にメリハリのきいた演奏を披露していました。最近の日本人のテナー・サックス奏者でこれだけセンスのある演奏をしている奏者はお目にかかったことはありません。音の最後尾が鼻にスーッと抜けていくような感じの演奏はとても心地よいもので、今後の活躍が楽しみな若手です。

 今年は本当にこのBody&Soulにはよく足を運びました。素晴らしいミュージシャンが集い、素晴らしい演奏が日々行われているのも、ひとえにこの店のオーナーの人徳なのでしょう。そんなお店と出会えたというのはこの1年の様々な出来事の中でもとりわけ貴重な経験でした。

 ただ感謝あるのみです。