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映画、書評、ジャズなど

「インファナル・アフェア3」★★★★☆

映画

 ついにインファナル・アフェア・シリーズの最終章です。この作品を見ると、このシリーズ全体を通した全貌がはっきりしてきます。

 本作では新たに警察官のヨン(レオン・ライ)と中国本土のマフィアのシェン(チェン・ダオミン)が登場します。

 マフィアに潜入していた警察官のヤンを殺害して善良な警察官としての道を歩み始めたラウ(アンディ・ラウ)は、ヨンがシェンと接触していることを知り、ヨンが潜入マフィアであると確信する。ラウはヨンの部屋を監視して、証拠を掴もうとするが、逆にラウ自身が監視をされていた。そして、ラウがヨンに証拠のテープを突きつけたそのとき、真相が明らかになる。

 実は、殺されたヤンだけでなく、シェンも潜入警察官だったのだ。ヤンとヨンとシェンの3人は
互いが警察官であることを知っていたのだった。ヨンは警察学校でヤンと一緒だった。そして、ヤンが退学したことでヨンは優秀賞を取れたのだった。3人はいつか3人で会うことを誓い合っていたのだが、それが叶う前にヤンは殺された。ヨンとシェンはヤンの仇をとることを誓う。

 ラウが突きつけたテープにはラウ自身がサムと会話する様子が録音されていた。「善人になりたい」と叫びながら取り乱したラウはヨンを殺害する。そして、ラウは拳銃を自らのあごに向けて撃ち放った。 

 シェンは女医のリー(ケリー・チャン)に対してこうつぶやく。

「運命は人を変えられるが、人は運命を変えられない。」


 正直この3作目は、時空が進んだり戻ったりを頻繁に繰り返し、また、しばしば唐突に空想の場面が出てきたりしますので、1作目と2作目をよくおさらいしておかないと、何が何だか分からないまま進んでいってしまう可能性が大いにあります。

 しかし、全貌の解明に至る展開は見事です。

 最後の方のシェンの言葉にあるように、結局、ラウはマフィアとして生きる運命にあったわけで、いくら善良になりたいと心の底から叫んでみても、善良にはなれなかったのです。

 それがもっとも現れているのは、ピストルをどこに向けて撃つかという点です。

 シェンとヤンが最初に向き合ったとき、お互いに頭を狙うことはありませんでした。ヤンはシェンの足を狙い、シェンはヤンの腕を狙ったわけです。ところが、ラウは最後、ヨンの頭を狙って殺してしまいます。ラウは善良にはなれない運命にあることがこの点にはっきりと現れていたと言えるでしょう。だからこそ、生き残ったシェンは、自分の足に打ち込まれたピストルの弾をヤンのお墓の前にたたずんでいたリーに<ヤンの勲章>として渡したのです。

 他方、善良な警察官の仲間に入れなかったラウは、最後、不自由な身となって療養生活を送ることになります。ラウの運命は、サムの妻によってマフィアの道へ導かれた時点で既に決まってしまっていたのです。

 人間関係は複雑ですが、それを読み解いていくと何と奥が深いことでしょう。

 この3作品目は第1作目から予定されていたもののようで、本来、第1作目のあとにこの第3作目が続く予定だったようです。ところが、映画会社の社長から過去に遡ってはどうかという提案があり、第2作目ができたようです。

 いずれにしても、この3作品は時間的に連続したものとしてではなく、3作品がそれぞれ互いに時間を重ね合いながら、全体として1つの大きな全貌を形成しているところが見事としか言いようがありません。このような構成をとるシリーズ映画というのはあまりないのではないでしょうか。

 映画を見終えたあとしばらく声が出なかったほど、その出来映えは素晴らしいものでした。