- 出版社/メーカー: ファーストトレーディング
- 発売日: 2006/12/14
- メディア: DVD
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この作品は、主役が定まっておらず、紳士風の盗人のバロン(ジョン・バリモア)、売れっ子の踊り子グルジンスカヤ(グレタ・ガルポ)、ビジネス界の大物のプレイジング(ウォーレス・ビアリー)、プレイジングの下で秘書として雇われたフレムヘン(ジョーン・クロフォード)、かつてプレイジングの会社でこき使われていたクリンゲライン(ライオネル・バリモア)の5人がホテルの中で様々な出来事を繰り広げながら進んでいきます。
紳士風で色男のバロンは、廊下で出会ったフレムヘンと意気投合するとともに、グルジンスカヤの部屋に真珠のネックレスを盗みに入ったところ、舞台について悩んでいたグルジンスカヤに見つかり、気に入られてしまう。
クリンゲラインは、長年こき使われてきた人生だったが、病気をきっかけに自暴自棄になり、持ち金を使い果たすつもりでグランド・ホテルに泊まっていた。かつては、プレイジングにこき使われていた身であったが、このホテルの中ではそんな過去の結びつきは関係ない。
クリンゲラインはバロンの導きにより、人生で初めてギャンブルに手を出すが、大変な運を味方にして大勝ちする。他方、プレイジングは狙っていた買収話がうまく行かない。
ある日、バロンがフレムヘン目当てに部屋に忍び込んだところ、プレイジングに見つかってしまう。プレイジングは、クリンゲラインがギャンブルで手にした金をバロンが盗んだことを咎め、バロンを殴って殺してしまう。それを見て動揺したフレムヘンは、クリンゲラインを呼んでくる。プレイジングはクリンゲラインに自分の窮地を救ってくれるよう懇願するが、クリンゲラインは耳を傾けず、警察に通報し、プレイジングは警察に連行される。
グルジンスカヤはバロンが殺されたことを知らず、バロンが自分の次の移動先についてきてくれるものと信じているが、結局バロンは姿を見せなかったため、あわただしくホテルを後にする。
バロンに気を持っていたため落ち込んでいたフレムヘンは、慰めてくれたクリンゲラインと意気投合し、二人は一緒にパリへ行くためにホテルを後にする。
こうしてホテルは何もなかったかのように、新しい賓客を迎え続けていくのだった・・・。
いろいろな人間がやって来てはやがて去っていく、こうして日々人間模様が交錯するグランド・ホテルは人間社会そのものを象徴していることは言うまでもありません。人間もこの世に生を受け、社会という場においていろいろな事件に巻き込まれたり、喜怒哀楽を繰り返しながら生活をするものの、やがて人生を閉じる時が来て、この世から一人また一人と姿を消していくことになります。
グランド・ホテルも宿泊客の事情は千差万別で、それぞれの人間が様々な事情を抱えながら泊まりに来て、偶然に出会ったりして、ある者は恋をし、ある者はともに飲み明かしたりしているわけですが、それは、様々な環境の下でこの世に生を受けた人間たちがひょんなことで出会い、そして別れていく様と類似です。
バロンは殺され、多くの人たちが悲しむものの、やがて、ホテルの宿泊客は誰もバロンのことを知っている人間がいなくなり、バロンの死は忘れられていくことになるのですが、この点も人間社会と似ています。この世に生を受けた人間も、人々の記憶にとどめられる者はほんのわずかで、圧倒的多数の者は社会から忘れられていくわけです。
この作品では、そんな人間社会の儚さを、ホテルという場を借りて実にうまく表現しています。
何度見ても胸が熱くなる思いをする映画というのはあまりありませんが、この作品は私にとってそんな作品の一つです。
ちなみに、本作の撮影では、グレタ・ガルポとジョン・クロフォードが大げんかを繰り広げたようです。映画を見る限り、そんな雰囲気は伝わってこないのですが、それもそのはずで、この二人が一緒の画面に出ているところはないのだそうです。