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映画、書評、ジャズなど

「サンセット大通り」★★★★★

映画

サンセット大通り スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

サンセット大通り スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

 ビリー・ワイルダー監督の1950年の作品です。往年の栄光にすがり続けている無声映画時代に活躍したハリウッド女優とトーキー映画時代のしがない脚本家が遭遇し、破滅への道へと突き進んでいくという内容ですが、とにかく魅力といえば女優を演じたグロリア・スワンソンの演技につきます。


 脚本家のジョー・ギリス(ウィリアム・ホールデン)は脚本がなかなか認められず、所有する車を手放さなければならない状況に追い込まれていた。借金の追い立てから逃走する途中、偶然ある大邸宅に逃げ込み、空いている駐車スペースに車を隠すことにする。その豪邸は廃墟のような雰囲気を漂わせていたが、そこに住んでいたのは、ハリウッドの往年の大女優のノーマ・デスモンド(グロリア・スワンソン)と使用人のマックスの2人だった。

 時代はトーキー映画が隆盛であり、無声映画時代に活躍した女優であるノーマは、映画界から忘れ去られていた。しかし、ノーマは多くのファンが自分の復帰を望んでいると妄想している。ノーマは自らがサロメの役を演じる脚本を書きためていたのだが、ジョーが脚本家だと聞き、ノーマはジョーを別宅に住まわせて、脚本を完成させようとする。

 実は、ノーマはジョーに恋心を抱いており、ジョーは次第にノーマ邸での生活に窮屈さを感じるようになる。

 やがてノーマはジョーのまとめた脚本を自分の復帰作として売り込もうと、パラマウント撮影所のトップであるデミルに脚本を渡す。しばらくしてデミルの部下からノーマ宛に電話がかかってくるようになる。ノーマはその電話が復帰作についての連絡だと信じ込み、自らパラマウント撮影所に乗り込んで、デミルに会う。しかし、デミルの部下からの連絡は、ノーマの車を借りようとするオファーの電話であり、ノーマへの出演依頼ではなかった。

 そうとは知らずにノーマは復帰作への出演に向けて、涙ぐましいばかりにエステに精を出している。ジョーは夜密かにノーマ邸を抜け出すようになり、友人の彼女である若い女ベティと密会し、二人で脚本の制作に取りかかるようになる。

 ジョーはベティに自分がノーマ邸で暮らしていることを打ち明ける。ジョーは荷物をまとめてノーマ邸を出ていくことを決意する。そして、ジョーはノーマに対し、デミルはノーマを映画に出演させる気がないとう事実をはっきりと伝える。ノーマは出ていこうとするジョーをピストルで撃ち殺した。

 ノーマ邸には大勢のマスコミが押しよせる。使用人のマックスは、階下へと降りていく階段を宮殿の階段に見立て、自宅の階下に大勢のカメラをスタンバイさせた。大勢のカメラに見つめられる中、ノーマはサロメを演じながら階下へと降りていく。それが使用人マックスのノーマに対する最後の奉公だった・・・。


 見終わった後、しばらく声もでないほど、壮絶な最後のシーンに圧倒されてしまいます。最後のシーンは私のこれまで見た映画の中でも1、2を争うほどよくできたものでした。

 使用人マックスの涙ぐましいばかりのノーマに対する献身的な愛が物凄く切なく感じられます。マックスはなぜそこまでノーマに対して献身的な愛を捧げたのか。実は、マックスはもともとノーマの出演作の監督であり、監督業を捨ててノーマの最初の夫となったのだった。それが今やノーマの使用人となり、献身的にノーマに仕えているというのは、何とも切なくなります。献身的な使用人マックスの存在が見る側にノーマの哀れさをより一層色濃く伝える効果を与えているのです。

 それにしても、グロリア・スワンソンによるノーマの演技は壮絶という言葉でしか表現しようがありません。なぜ壮絶かといえば、このノーマという役柄自体がスワンソン自身の置かれた境遇を投影しているからです。

 スワンソンもかつては華やかな映画スターだったのですが、この作品に出演するまでしばらくの間はヒット作に恵まれていなかったようです。そんな彼女がこの役柄を引き受けたこと自体奇跡的としか言いようがありませんが、だからこそこんな素晴らしい映画が生まれたのでしょう。

 この作品の中でスワンソンがチャーリー・チャップリンの物まねをするシーンは、女優魂を感じます。そして、ジョーがノーマに出会うシーンで、ジョーがノーマに対してかつての無声映画の大物と声をかけたのに対してノーマが次のように言い返すシーンは印象的です。

「今も大物よ。映画が小さくなったのよ。」

 こういう素晴らしい映画に巡りあうからこそ映画はやめられません。