- 出版社/メーカー: IMAGICA TV
- 発売日: 2008/05/31
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監督のグイド(マストロヤンニ)はスランプに悩んでいたが、周囲はグイドのそんな悩みをつゆ知らず、グイドに容赦なくあれこれと用件を話しかけてくるので、グイドの悩みはさらに深まっていくばかりだ。温泉地で療養していても、グイドの下には様々な来客が押し寄せてくる。
グイド心が落ち着くのは、幻の中に存在する女クラウディアと共にあるときだけだった。愛人や妻を撮影場所に呼び寄せるが、グイドの気持ちは一向に落ち着かない。
グイドの脳裏には、少年の時の記憶がしばしば蘇ってくる。ワイン風呂に入って酔っぱらってしまったこと、夜電気を消した部屋で少女から教えられた金持ちになれるという呪文、少年のときに浜辺でサラギーノという肉付きのよい浮浪女とルンバを踊って大人たちからこっぴどくしかられた記憶、こうしたささいな記憶が大人のグイドの脳裏にしばしば蘇ってくるのだった。
悩めるグイドは大金をつぎ込んで巨大な宇宙船のセットを制作するが、グイドの思いは誰にも理解されず、自分でもなぜこんな宇宙船を制作することになってしまったのか理解できなかった。
グイドの混乱はさらに深まり、大勢の女たちをはべらせたハーレムを想像する。そこは厳しい規則があり、年齢制限を過ぎたら2階に追いやられることになっていた。一人の女が抵抗するが、グイドの厳しい態度により、結局、2階に連れて行かれてしまう。
ついにクラウディアが役を求めてグイドの下にやってきた。グイドとクラウディアは2人で話をする。しかし、グイドは、クラウディアに対して、君も退屈な女だと言って、役を与えることを拒否してしまう。
結局、撮影は中止されることが決定し、巨大な宇宙船は解体されることになる。
そこに一人の道化が準備ができたと言って寄ってくる。思い出の中の男女が大集結してくる。グイドはようやく元気を取り戻して、妻のルイザに話しかける。
「人生はお祭りだ。一緒に過ごそう。」
ルイザは確信は持てないけれどもやってみると返答する。
音楽隊の演奏をバックに、大勢の人々が手をつないで円になって踊る・・・。
最後のハッピーエンドの希望を含んだ終わり方が、何ともフェリーニ監督らしいです。
この作品のタイトルは、フェリーニが映画を撮り始めてから8本半(短編や共同監督作品を1/2として数えた場合)であったことから、8 1/2(はっかにぶんのいち)と付けられたそうです。
映画監督を主人公にしている点が、トリュフォー監督の「映画に愛をこめて アメリカの夜」の設定とも通じるところがある作品ですが、こういう映画を作ることは、フェリーニくらいの大監督でなければ決して許されないでしょうし、そういう監督が作るのでなければ、つまらない作品に終わってしまうのが常です。本作品はさすがフェリーニ監督だけあって、ナンセンスにもセンスを感じてしまう作品に仕上がっています。
印象的なシーンとしては、もちろんラストの大団円で踊るシーンが挙げられますが、私にとって最も脳裏に焼き付いたシーンは、サラギーノのルンバです。豊満な尻をふるわせながら中年のサラギーノが少年と踊るシーンは、何か見てはいけないものを見たような後味を残します。
こういう精神の内面をえぐるような作品を作れるというのは、神学や哲学を通じて形而上学を発展させてきたヨーロッパの歴史によるところが大きいのかもしれません。