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「誰が為に鐘は鳴る」★★★★

誰が為に鐘は鳴る [DVD] FRT-064

誰が為に鐘は鳴る [DVD] FRT-064

 ヘミングウェイの原作があまりに有名な映画です。ゲイリー・クーパーイングリッド・バーグマンの豪華な競演が見所です。

 スペイン内戦の最中、アメリカ人のロベルト(ゲイリー・クーパー)は、人民戦線側に立って鉄道爆破などのゲリラ活動に携わっていた。ある日、ロベルトは、山の中に架かる鉄橋の爆破という困難な任務を命じられる。ターゲットの橋は、常に数人の見張りが就いているなど、厳重な警備がなされていた。

 ロベルトは、ジプシーの集団の助けを借りて、この任務を遂行しようとする。このジプシーはパブロという男に率いられていた。パブロはかつては数々の殺人を繰り返す闘志を持っていたが、今では飲んだくれて闘志を失っており、仲間の忠誠はその妻ピラーに移りつつあった。

 このジプシーのところに、マリア(イングリッド・バーグマン)という女性が身を寄せていた。マリアは両親が殺され、この集団と行動を共にすることになったのであるが、ロベルトに好意を寄せ、ロベルトとマリアは間もなく愛し合う仲になる。ピラーも二人の関係を温かく見守る。

 ところが、ロベルトの極秘の任務は噂として出回っていることが判明する。敵の大軍が押し寄せ、仲間のソルドが命を落とす。既に仲間の信頼を失っているパブロは、やがて任務のためにロベルトが持ち込んだ起爆装置を台無しにして逃走を試みるが、すぐに仲間を連れて戻り、仲間と行動を共にすることを誓う。

 作戦の当日、ロベルトは橋の見張りたちを殺害し、手榴弾を使って橋の爆破を試みる。仲間を失いつつも、橋の爆破には成功したが、いざ馬で逃げるときに、ロベルトは敵の銃弾で足を撃たれた。マリアはロベルトと離れて逃げることをためらったが、ロベルトはマリアを先に行かせ、一人、敵と闘うのだった・・・。


 御存知のとおり、ヘミングウェイは自らもスペイン内戦に参戦し、人民戦線側に就いてフランコの部隊と戦っています。この内戦の凄惨さは、ピカソの「ゲルニカ」に象徴されます。第二次世界大戦の前哨戦ともいうべく、ファシズム共産主義勢力が入り乱れたものとなっています。結局、内戦はフランコ側が勝利を収め、戦後もフランコ政権が続くわけですが、スペインはその後うまく国際社会に復帰していきます。フランコの死後は議会制民主主義立憲君主制を取り入れるなど、見事ともいうべき変遷を遂げていきます。

 本作品は、1943年という制作年もあり映像には古さが感じられてしまいますが、それでも当時としてはかなりがんばった形跡は見られます。

 それにしても、イングリッド・バーグマンは多彩な顔を見せてくれます。この作品のバーグマンは個人的にはそれほど好きというわけではありませんが、ショートカットで山奥の洞窟で暮らす女という役もこなしてしまうのはやはり並みの女優ではありません。