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「太陽がいっぱい」★★★★☆

太陽がいっぱい [DVD]

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 アラン・ドロンを一躍スターダムへとのし上げた作品です。

 トム・リプレイ(アラン・ドロン)は、フィリップ(モーリス・ロネ)の父親からフィリップを連れ戻すことを依頼され、ナポリに来ていた。フィリップはトムに、帰ることを伝える手紙を父親に送ることを約束したが、フィリップは手紙を送っておらず、トムは父親から契約の打ち切りを伝えられてしまう。

 フィリップは恋人のマルジュ(マリー・ラフォレ)とトムと3人で船に乗って出かける。途中、トムはフィリップのいたずらで、船につないだ小型のボートに置き去りにされてしまい、ひどい火傷を負う。そして、フィリップと恋人のマルジュは、トムの小細工によって船上で大げんかし、マルジェは船を下りてしまう。その後、トムはフィリップを小刀で刺し殺し、死体を紐で船に結びつけた。

 その後、トムはフィリップになりきって、パスポートも偽造して生活していた。フィリップが生きていることを偽装するため、フィリップになりきってマルジュに電話したりもした。ところが、フィリップの名で借りている部屋に、フィリップの友人のフレディが訪ねてきた。フレディは、トムがフィリップになりきって生活していることを悟ったため、トムはフレディを殺害する。

 トムは、フィリップが自殺をほのめかし、全財産をマルジュに譲ることを内容とする手紙を偽装した。そして、悲しみにくれるマルジュに対して、トムは愛を告白し、マルジュもそれを受けいれた。

 フィリップの恋人を手にした上に、フィリップの財産まで手にすることになったトムは、海辺で至福の時間を過ごしていた。トムは、

太陽がいっぱいだ。今までで最高の気分だよ。」

とつぶやき、一番高い酒を注文する。

 しかし、警察の手はトムに迫っていた。偽装された遺言状に基づいてフィリップからマルジュに譲られるはずだった船をフィリップの父親らが確認のために海から引き上げると、船に結びつけられたフィリップの遺体が一緒に引き上げられてきた。

 「お電話です」と言われて呼ばれたトムが微笑みながら近寄ってくる場面で映画は終わる・・・。


 物憂げで感傷的なあの有名な挿入歌のメロディが映画の節々で流れます。そして、この挿入歌に加え、地中海の太陽のまぶしさの下で繰り広げられる殺人という設定が、この映画の歪んだ雰囲気を醸成しています。カミュの『異邦人』で殺人の理由を「太陽のせい」と述べたムルソーを彷彿とさせる感じがします。

 最後、呼ばれたトムが幸せの絶頂からどん底へと突き落とされようという場面で映画は終わりますが、映画史上に残る最高の名場面の1つでしょう。