オランダの歌姫トレインチャのブルーノートでの公演を聴いてきました。
トレインチャは最近立て続けにバート・バカラックの曲を集めたアルバムを出しており、今年2月のバカラックの日本公演でもバカラックから声をかけられて共演を果たしています。バカラックの曲と言えば誰しもそのうちのいくつかは聴いたことがあるはずですので、今回の公演も大変楽しめるものになると大いに期待して足を運んだわけです。
私も今回の公演を聴きに行くに先立って「WHO'LL SPEAK FOR LOVE BURT BACHARACH SONGBOOKⅡ」を購入して聴いていたものの、正直、CDからは大した感銘を受けなかったのですが、実際のトレインチャの歌声は、自在にビブラートを聴かせた大変迫力あるものであり、実に素晴らしかったです。
フール・スピーク・フォー・ラヴ-バート・バカラック・ソングブック2-
- アーティスト: トレインチャ,メトロポール・オーケストラ,マタイン・ヴィンク,バート・バカラック,アラム・ケルスベルゲン,ハンス・ヴルーマンス,トゥーツ・シールマンス
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2008/02/14
- メディア: CD
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バックでトレインチャを支えるバンドのメンバーのまとまりもしっかりとしており、ベテランの風格を醸し出していたギターのペーター・ティーハウス、堂々とした風格を備えたトランペットのヤン・ヴァン・ダウケレンを中心に、息の合った心地よい演奏を披露していました。
ところで、最近、オランダ・ジャズに勢いが見られるようです。少し前の毎日新聞でもオランダ」・ジャズが取り上げられていましたが、
http://mainichi.jp/enta/music/archive/news/2008/03/11/20080311dde012200055000c.html
オランダ・ジャズの魅力というのは「束縛のなさ」だというのがこの記事の主張です。そして、オランダで開催される「ノーズ・シー・ジャズ祭」は今では世界的な音楽祭となっており、また、オランダでは音楽教育システムが整備され、NPOの活動なども活発なのだそうです。
そして、音楽評論家の成田正さんは、オランダ・ジャズの魅力を次のように分析されています。
「北欧のクールさ、フランスやイタリアの前衛趣味などにはさまれ、オランダジャズはその本当の姿を今世紀まで現さなかった」と音楽評論家の成田正さんは分析する。「でも、その最大の魅力であるリリシズムが『オランダならでは』として最近、注目を集めるようになった。伝統的でありながら、何ものにも縛られず、新鮮な独特の語り口を持つ音楽。特に日本人には好まれる味わい」という。
アメリカの黒人たちの演奏がルーツであるジャズが、本場のアメリカで勢いが失われた感のある今日、オランダでジャズの勢いが増しているという事実は、自由なスタイルを追求し続けてきたジャズらしいという感じがします。
それにしても、トレインチャの公演には大勢の日本人客が押し寄せ、会場はほぼ満員でした。バカラックという点に惹かれて来ていた年配の方々もいらっしゃるかもしれませんが、バカラック世代とはかけ離れた若い人たちが日本では無名に近い存在ともいうべきトレインチャの公演に足を運んでいるというのは、日本人のジャズに対する嗜好の敏感さを示しているのかもしれません。