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雅楽演奏会@宮内庁楽部

 皇居で雅楽の演奏会がありました。

 宮内庁のパンフレットによれば、「雅楽」とは、元来「俗楽」に対する言葉で、正統の音楽を意味するのだそうです。日本の「雅楽」は、日本古来の歌と舞、古代のアジア大陸から伝来した器楽と舞が日本化したものおよびその影響を受けて新しくできた歌の総体なのだそうで、ほぼ10世紀(平安時代中期)に今日の形に完成した日本の最も古い古典音楽なのだそうです。

 演奏会は「管弦」と「舞楽」の2つのパートに分かれていました。

 「管弦」はもっぱら唐楽の演奏で、いわゆる「三管両絃三鼓」の楽器編成で演奏します。つまり、3本の管楽器と2個の絃楽器、それから3つの鼓で演奏するということです。演奏会では「太食調音取」、「催馬楽 更衣」、「抜頭」、「長慶子」という曲目が演奏されました。

 後半の「舞楽」は、「輪台」という中国の西域の地名から曲名がつけられているものと、「納曽利」という高麗から伝わった舞曲が披露されました。

 1時間半にわたる演奏会でしたが、おそらく多くの人たちは、演奏に興奮するというよりも、時々襲ってくる睡魔と格闘されていたのではないかと思います。それは、要するに現代人がこういう類の音楽から縁遠い生活を送っているという証拠です。街角やテレビから流れてくる音楽は、もはや西欧の音階をベースにした音楽であって、西欧的なコード進行などとおよそ無縁な雅楽のような音楽を耳にする機会は、日常生活の中ではほとんどありません。だから、突然こういう音楽を聴いても、正直耳が受け付けないわけです。いかに日本の音楽が西欧化してしまったのかを痛感せざるを得ません。

 もう一つ思ったのは、「雅楽」は日本の最も古い古典音楽だということですが、結局、どの曲も中国や朝鮮から伝来してきた音楽をベースにしたものだというわけです。だから日本のオリジナル性がないということを言いたいのではなく、もともと文化というのは純粋な固有文化というのがあるというわけではなく、元来いろんな文化が混ざり合って出来上がっているのだということを改めて認識させられたわけです。

 皇居という日本の象徴の中心で演奏される古典音楽が中国や朝鮮からの伝来音楽だという事実は、少し奇妙な感じもしたのですが、そもそも、日本の文化が大陸の渡来人たちからの影響を強く受けていることは日本史で繰り返し学ぶことでありますし、天皇神話は大陸からやって来た天皇家の日本列島平定史という捉え方だってできるわけですから、よく考えれば当たり前のことなのかもしれません。

 そう考えると、日本固有の文化というのはいったい何なのだろうという気がふつふつとしてくるわけです。特に日本文化というのは、他の文化に比べても、外来文化の受容性が高いわけですから、そうした受容性こそが日本文化のアイデンティティなのだと考えるべきなのかもしれません。

 「雅楽」は一度は聴いてみる価値があります。