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映画、書評、ジャズなど

中国疾走〜中国外交の狡猾さ

 先週、読売新聞で5回にわたって連載されていた「中国疾走」というコーナーがありましたが、中国の外交戦略の狡猾さや帝国主義的発想が出ていて大変興味深いものでしたので、ご紹介したいと思います。

 昨今の中国外交で特に注目すべきは、対アフリカ外交でしょう。中国は確実にアフリカ諸国を取り込みつつあります。2006年に世界保健機関(WHO)事務局長選挙がありましたが、事前の票読みでは日本人候補は勝てるはずでした。しかし、蓋を開けてみると、日本人候補は落選し、結局、中国が推す香港出身候補が当選するという結果となりました。これは日本政府がアフリカ票の票読みを誤った結果だったわけです。

 中国の対アフリカ外交は、人的側面において日本政府を圧倒しているようです。例えば、国連平和維持活動(PKO)部隊への要員派遣でも、中国は日本の約50倍の1963人(今年1月時点)の人員を派遣しており、派遣先の大半はアフリカ諸国だということです。

 近年の内戦で大規模な死者が出ているスーダンダルフールでも、中国の部隊が活動しています。今年2月にスピルバーグ監督が中国のダルフール問題への対応を不満として、オリンピックの文化芸術顧問の辞退を表明したことは記憶に新しいところですが、それだけ中国人がダルフールに深く浸透していることの現れといえるでしょう。

 他方、アフリカ諸国に深く浸透しつつある中国人は、現地人との間で摩擦を生じさせている面もあります。ダルフールでも反政府勢力が中国人のPKO部隊や石油産業労働者の撤退を求めているとのことです。
 また、アフリカ西岸ガボンでも、中国による大規模な国立公園の開発が行われており、鉱山開発やダム建設が進められていますが、こうした開発に従事する中国人たちが巨大なキャンプを築いているとのことで、現地人との間の摩擦の日だねとなっているようです。
 さらに、ザンビアでも今年3月、中国企業の精銅所の労働条件に怒った現地労働者約500人が暴徒化し、中国人幹部が負傷したり、施設が放火されるなどの騒ぎがあったとのことです。

 中国がこれだけ熱心にアフリカに食い込んでいるのは、もちろん資源を当て込んでのことです。「内政不干渉」を掲げている中国は、独裁政権が多いアフリカ諸国からすれば、欧米諸国に比べて歓迎すべき国ということになります。このため、中国企業がアフリカの独裁者たちと手を組んで、資源を確保する代わりに、公共事業を中国が請け負うという形で、両者の連携が進められているということのようです。
 ちなみに、アフリカでの建設事業受注総額は、2006年に中国がフランスを抜いて1位に立っており、市場占有率は28%に上っているそうです。

 中国は併せて、こうしたアフリカ諸国に対して家電製品や機械、繊維製品、軍需用品などを輸出しており、アフリカとの貿易総額は10年前の13倍に達しているとのことです。安価な中国製品の流入によって、アフリカの繊維産業などは大きな打撃を受け、アフリカ人労働者の失業にもつながっているようです。

 また、中国は、対中東政策においても、独自の全方位外交を展開しています。かつての中国はアラブ一辺倒だったのが、近年、中国はイスラエルに急接近しているとのことです。その現れが、中国に住む中国系ユダヤ人がクローズアップされてきたことです。中国河南省の古都・開封には、2000年前にパレスチナを追われたユダヤ人が渡ってきており、開封のユダヤ人社会は「東方見聞録」にも紹介されているのだそうです。そうした中国系ユダヤ人に対し、2年前にイスラエル市民権が与えられたのだそうです。
 こうして彼らの存在がクローズアップされてきた背景には、ユダヤ人団体と中国政府の思惑と、双方の「実利主義」が合致した結果だというわけです。中国の狙いは、イスラエルが開発したハイテク兵器にあるようです。

 また、イスラム諸国との関係でも、イランの地下鉄は中国企業が参加するなど、大きな存在感を示しているようです。国際社会がイランの核開発を批判し、イランとの関係を停滞させているのを好機として、中国はイランに急接近し、イランの油田の開発契約を締結したりしているようです。あるテヘラン外交筋による

「中国は本音では、イランに制裁が発動されたままの状態の方が国益にかなうと考えているのではないか」

との指摘には、かなりの衝撃を受けました。
 このほか、パキスタンの貨物港クワダル港の開発でも中国政府は中心的な役割を果たしているほか、中国とパキスタンを結ぶ車線の複線化等にも力を入れているとのことです。これは、クワダル港がペルシア湾の出口に位置しており、中国政府としては、シーレーンの確保の観点からクワダル港の開発に食い込んでいるということのようです。パキスタン政府内では、10から15年以内に中国の海軍基地ができると受け止められているということですから、これもまた驚きです。

 また、中国は、東南アジアへも触手を伸ばしています。来年東南アジア競技大会が開催されるラオスに対しては、主要施設の整備を中国が行い、その見返りに、ビエンチャンの利用価値の高い土地の開発許可を中国企業に与えられているのだそうです。また、雲南省昆明からラオスを経由しバンコクに至る「南北回廊」の積極的な整備を行っています。

 ちなみに、New York Timesでもちょうどこの「南北回廊」が大きく取り上げられています。
http://www.nytimes.com/2008/03/31/world/asia/31laos.html?ref=asia

 こうした中国の行動様式を見ると、一昔前の「帝国主義」を彷彿とさせます。というよりもむしろ、「帝国主義」そのものだといった方が当たっているでしょう。

 それにしても、中国人のバイタリティーには驚愕してしまいます。世界各国における華僑のバイタリティーはよく知られていますが、近年はその勢いで資源確保に向かっているというわけです。正直、少々の恐ろしさすら感じてしまいます。

 今の日本外交には、ここまでのしたたかさは感じられません。別に狡猾であることが良い外交姿勢であるとは思いませんが、国際社会で生き延びていくということは、こうした狡猾な国々と競っていかなければならないことを意味するわけですから、日本外交ものほほんとしているわけにもいきません。現に、東シナ海問題では、中国外交の狡猾さと真っ正面からぶつかっているわけです。

 この読売の連載は、大変ショッキングかつ示唆に富むものでしたので、是非お目通しください。