- 出版社/メーカー: 東宝
- 発売日: 2004/03/26
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薪岡家は、かつては大阪船場の船問屋として隆盛を極めていたが、今では店を譲り渡して、上本町に居を構えていた。長女の鶴子(岸恵子)が本家を継ぎ、二女幸子(佐久間良子)が結婚して家を出て分家となっていた。三女雪子(吉永小百合)と四女妙子(古手川祐子)はいまだ嫁ぎ先が見つかっておらず、本来は本家に身を寄せているべきだったが、ある事件が発端となって、分家に収まっていた。その事件とは、次のようなものだった。妙子が宝石商のぼんぼん息子の啓ぼんと駆け落ちをした事件が新聞沙汰になったのであるが、新聞には妙子ではなく三女の雪子の名前で出てしまった。そこで、長女鶴子の夫で本家に養子として来ていた辰雄(伊丹十三)が記事を取り消させようと新聞社に掛け合ったのだが、後日、妙子の名前がかえって大きく出てしまったのだ。それが雪子と妙子の不信感を招き、二人は二女幸子の分家に収まっていたのだった。
一家は、三女雪子の縁組みを早く成立させようと、たびたびお見合い話を持ってくるが、雪子はなかなか首を縦に振らない。そして、四女妙子は、親族たちが雪子ばかりに気を揉んでいるのが面白くなく、薪岡家とは不釣り合いの写真家と一緒になろうとしたり、バーテンダーのところに押しかけたりして、親族たちを悩ませる。
そんなとき、銀行マンの辰雄の東京転勤が決まる。本家を守る強烈な自負を持つ長女鶴子は、東京について行くべきかどうかについて悩む。
結局、鶴子は、辰雄について東京に行くことを決心する。三女雪子も、ようやく華族の出の男との縁談が順調に進んでいた。妙子もバーテンダーのところで、貧しいながらも何とか生活をするめどがついていた。
鶴子と辰雄が汽車に乗って大阪駅を出発するところに、幸子と雪子たちも見送りに来ていた。細雪が舞う中、汽車は東京へ向けて出発していく・・・。
この作品の特筆すべき点は、何と言っても、4姉妹の配役の豪華さでしょう。岸恵子の堂々たる貫禄、そして、吉永小百合の和風で清楚な立ち振る舞い等々、四人の女優たちの強烈な個性がぶつかり合ってつぶされることなく、市川監督はうまく映画の中でそれぞれの個性を生かしています。
全編を通じた、時間のゆっくりとした流れ、現代を生きる我々がなかなか実感できない部分です。今でこそ<階級>のない日本社会ですが、かつてはこの薪岡家の人々のように、生計を立てるためにあくせく働かなくても優雅に暮らしていける身分がありました。そうした優雅な部分が、時代の移り変わりの中で、徐々に失われていくわけです。それでもなお、本家を守る鶴子は、ハイクラスとしてのプライドをもって、毅然と優雅に生きようとしています。
ラストの間際に、幸子が妙子のみすぼらしいアパートの部屋でこうつぶやきます。
「なんやごたごたしたり、季節も移り変わったけれど、結局なんにも変わらへんなぁ。」
本人たちがはっきりとは自覚していないところで、彼女たちを巡る環境は大きく変わってきていて、彼女たちは静かに没落に向かっているのです。
華やかなるものが消滅する過程に見せる一瞬の美しさ、これを徹底的に追求し映画を撮られた市川監督の熱意に感嘆します。
市川監督のご冥福をお祈りいたします。