- 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
- 発売日: 2007/12/07
- メディア: DVD
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ドイツの音楽家グスタフ・アシェンバッハ(ダーク・ボガード)は、滞在先のベニスで、家族と来ていたポーランド人の美少年タジオに一目惚れする。それ以来アシェンバッハは、タジオの美の虜になってしまい、その視線はタジオに注がれる。しかし、ベニスの雰囲気はどんよりとして暗かった。というのも、ベニスの町にはコレラが蔓延していたのだった。
アシェンバッハは予定を切り上げてベニスの滞在を切り上げようとしたが、帰りの行程で荷物が誤った場所へ発送されてしまい、荷物が戻ってくるのに時間がかかるとのことだった。このため、アシェンバッハは、やむを得ずベニスに引き続き滞在することになるが、内心はタジオとの再会に喜んでいたのだった。
アシェンバッハのタジオへの想いは強まっていき、タジオの後ろ姿をベニスの町で追ったり、顔に化粧まで施したりもする。そして、最後、ベニスの海岸で薄い太陽の光をバックにしたタジオの美しい姿に、アシェンバッハは打ち震える。そして、そのまま息絶えてしまう・・・。
映画のテーマが、老年に差し掛かる男性の少年に対する愛と苦悩というややこしいものですが、いやらしさや下品な要素は一切感じさせません。それは、アシェンバッハが芸術家という設定だからのように思われます。芸術と歪んだ愛情というのはしばしば結びつくものなのかもしれません。
それにしても、タジオ役のビヨルン・アンデルセンは正にはまり役としか言いようがありません。本当にギリシア彫刻のような容姿をおり、この作品の説得力を大いに高めています。
また、ベニスのどんよりとした気候が、この作品にうまくマッチしています。この作品で表現されている美は、あっけらかんとした美ではなく、大いに陰のある美です。だから、太陽が燦々と降り注いでいるシチュエーションではなく、厚い雲に覆われているシチュエーションだからこそ、禁断の愛に捕らわれているアシェンバッハの苦悩がよりうまく表現されているのではないかと思います。
全編を通じて本当に美しい作品です。