昨年末から開催されている展示会を見てきました。さすがに北斎人気は高いようで、いまだに多くの観客が詰めかけていました。
オランダ国立民族学博物館やフランス国立図書館所蔵の作品が並んでおり、普段見慣れている北斎のタッチとはひと味違った様々なタッチの絵を見ることができます。
北斎の浮世絵がゴッホを始めとするヨーロッパの印象派の画家たちに多大な影響を与えたことはよく知られていますが、フランスの作曲家ドビュッシーが北斎の『神奈川沖波裏』からの刺激を受けて交響詩「海」を作曲したというエピソードは驚きです。
この絵もよく見ると、<静>と<動>の対比が大変素晴らしい作品です。「大波」というのは北斎の長年のテーマだったようですが、この作品の「大波」はその集大成ともいうべきものです。手前の大きな波の躍動感と、後方にちょこんと位置した富士山との対比は見事です。特に今回気がついたのは、絵の右側の海面の盛り上がりがこの絵の力強さを引き出していることです。この海面の盛り上がりが左側の大波にぶつかっていこうとしているわけですから、小舟に乗った人たちの行く末が気になってしまうわけです。
<静>と<動>という意味では、『富嶽三十六景 甲州石班澤』も絶品です。
足元での荒波の激しい動きに対して、釣り人の持っているピーンと張った糸の不動性、そしてやはり後方にどっしりと構えた富士山が対照的に描かれています。
何度見ても新たな発見があるところに、日本が生んだ最大の画家の神髄が感じられます。