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映画、書評、ジャズなど

STAN GETZ/JOAN GILBERTO「Getz/Gilberto」

Getz/Gilberto

Getz/Gilberto

 1964年にリリースされた、ジャズとボサノヴァを融合させた作品で、ボサノヴァ・ブームに火を着けたアルバムです。当時はグラミー賞を獲得するなど、多大な反響を呼んだ作品で、今聞いても、全く古さを感じさせない都会的でおしゃれな音です。ジャズ・ファンでなくても、1曲目の「Girl from Ipanema」(=イパネマの娘)のメロディーが流れた瞬間、このアルバムを買って良かったと確信するはずです。晴れた休日の昼下がりのBGMに最もマッチするだけでなく、夜独りでウィスキーを片手に<日常>から逃避したいときにもうってつけのBGMで、平穏な心をかき乱す要素が全くない透明な音です。

 このアルバムは、当時、ウェスト・コーストのクール・ジャズ派として既に知られていたスタン・ゲッツと、ボサノヴァで認められつつあったジョアン・ジルベルトの2人を、アントニオ・カルロス・ジョビンが媒介となって結びつけることによって生まれたものです。実は、ゲッツとジョアンはレコーディング中、仲が悪く、ゲッツが録音後に自分のテナー・サックスの演奏を不自然なほど前面に聞こえるように施したといったエピソードもあるようです。

 そして、このアルバムの最大のエピソードは、ヴォーカリストとして参加しているジョアンの妻アストラッド・ジルベルトがレコーディング当日に急遽起用されたというものです。当時無名でデビューの機会をうかがっていたアストラッドは、レコーディング当日に自分も歌わせてくれと言い張り、起用が実現したようですが、この起用が大当たりで、以後アストラッドはその後大活躍していくことになります。

 このアルバムの目玉曲は何と言っても「Girl from Ipanema」(=イパネマの娘)です。リオのイパネマ海岸にある酒場でいつも出会う美しい娘をテーマにした曲なのだそうですが、ビブラートせずに耳元で囁くような声で歌うアストラッドの声は、高揚した気持ちをもクール・ダウンさせる効能があります。その他の曲も同様に、我々の疲れた心を癒してくれるものばかりです。

 ジャズという音楽は、非常に幅広いジャンルの音楽と融合して、稀にこうした“奇跡”的な作品を生み出すことがあります。だから、ジャズには病みつきにさせられます。