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映画、書評、ジャズなど

「ボーン・アルティメイタム」★★★★

映画

ボーン・アルティメイタム [DVD]

ボーン・アルティメイタム [DVD]

 記憶をなくした男ボーンシリーズの最終章である本作を見てきました。前作同様、テンポのよいストーリー展開と大仰なアクションで十分楽しめる作品に仕上がっています。

 英紙ガーディアンが<トレッドストーン計画>についてのリーク情報を手に入れ、ボーンと前作で殺されたボーンの彼女についても記事に掲載された。CIAは、<トレッドストーン計画>に続く極秘計画である<ブラックブライアー>というキーワードをエシュロンで盗聴し、ガーディアン紙の敏腕記者ロスがこの情報を新聞に掲載したことを突き止め、ロスを追う。他方、ボーンもこのリークされた情報から手掛かりを得ようとロスを電話で呼び出すが、ロスがCIAに狙われていることを知り、ロスをCIAの手から逃れさせようとするが、結局ロスは、駅の人混みの中で射殺されてしまう。

 ロスの残したメモを手掛かりに、ボーンはスペインのマドリッドに飛び、そこでCIAの支局長を務めるダニエルズに出会う。また、マドリッドでボーンは、前作においてベルリンで出会ったCIAの女性ニッキーと再会する。他方、CIAもダニエルズがロスに情報をリークしたことを突き止め、ダニエルズに加え、ボーンとボーンと行動を共にするニッキーの殺害をも企てる。ダニエルズは逃亡先のモロッコでCIA工作員の仕掛けた爆弾で爆死するが、ボーンとニッキーは間一髪CIAの追っ手から逃れた。

 ボーンにおそれを抱いたCIAは、かつてボーンの件に携わった女性職員パメラを作戦に動員する。ところが、実はパメラはボーンの行動にシンパシーを寄せ、CIAのやり方に疑念を抱くようになっていた。パメラはニューヨークに潜入したボーンから連絡を受け、ボーンの本名がデヴィッド・ウェッブであることを告げる。

 ボーンは、ついに<4-15-71>という暗号を手掛かりに、自らが<トレッドストーン計画>に足を踏み入れることになる研究所にたどり着き、そこでハーシュ博士と対面し、当時の記憶を取り戻したのだった。

 ラストは、ボーンは駆け付けたCIAからの追撃を受け、ビルの屋上から海の中に飛び込む。しかし、ボーンの行方は3日経っても確認できない。そのニュースを遠くで見ていたニッキーはにやりと笑う・・・。

 このニッキーがほくそ笑むラストシーンの作り方には、感服してしまいます。映画のラストが近づくにつれ、ボーンの運命が最後どうなるのか、誰しもが手に汗を握りながらスクリーンを見つめることになりますが、ボーンの安否をこのニッキーの笑みだけで表現してしまうところは、本当によくできた演出だと思います。

 また、この作品は、“人混み”の使い方が本当に上手いと感じます。ガーディアン紙の記者ロスが射殺されるまでのシーンでは、ボーンがロスのポケットにこっそりプリベイドの携帯電話を差し込み、それを使ってロスに靴ひもを結び直すためにしゃがむことなどを指示して“人混み”の中に紛れ込ませ、CIAの追っ手から逃れさせようとします。また、モロッコでも、CIAの追っ手とニッキーのチェイスは、やはり“人混み”の中です。

 現実の世界でも、都会の“人混み”の中におそらくは紛れているだろうと思われる外国人女性殺人犯は、人相が広く公開されているにもかかわらずいまだに逮捕されるに至っていないという事件がありますが、この作品の中でも、“人混み”が都会における最大の“盲点”であるという点をうまく突いた演出が施されていると言えます。

 映画全体のストーリー展開がリズミカルな分、場面同士のつながりについての説明が今ひとつ不十分との印象も受けますが、小気味よいテンポはそんな印象を補って余りあるほどの効果を有しており、決して途中で飽きることはありません。

 ただ、少なくとも前作は見てからこの作品を見た方がよいと思います。