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「鬼龍院花子の生涯」★★★★

鬼龍院花子の生涯 [DVD]

鬼龍院花子の生涯 [DVD]

 夏目雅子の好演が光る、宮尾登美子原作の極道系の映画です。夜中に地上波で放映されていたのを見たのですが、本当に素晴らしい女優が若くして亡くなられたことを改めて痛感させられます。

 松恵(途中から夏目雅子)は幼い時分に鬼龍院政五郎(仲代達也)の養女とさせられ、以降、極道の中で育つことになる。政五郎は闘犬でのごたごたのを仲介した際、末長との間で対立関係をもたらしてしまう。また、電鉄会社のストライキを中止させたりするが、その際に知り合った労働運動家の田辺と逆に意気投合してしまう。政五郎は妾との間の一人娘である花子と田辺を結婚させようとするが、田辺は松恵に一目惚れをしてしまい、そのことが政五郎の逆鱗に触れて、田辺は指を詰めさせられる。松恵は政五郎から肉体関係を迫られるが、松恵はかたくなに拒否する。やがて松恵は田辺の元に身を寄せるようになる。

 末長との対立は続き、花子の婚約者が殺され、そして、花子が末長に略奪されてしまい、その際に阻止しようとした田辺は末長側に殺されてしまう。

 政五郎は花子を取り戻そうと末長側に襲撃をかける。政五郎はついに花子を発見したが、対面した花子は一緒にいた男を政五郎から守る態度を見せる。政五郎はその後自首して、獄中で死ぬ。

 花子の消息はその後不明だったが、ついに松恵の元に花子から便りがあった。松恵が花子の元に駆けつけると、娼婦となった花子は命を落としていた・・・。

 146分にわたる長編映画ですが、途中だらだらする感じはありません。極道の壮絶かつ理不尽な生き方が大変リアルに描かれています。政五郎が大勢の妾を囲っていながらも、極道の妻として毅然とした態度で生きている本妻の歌を、岩下志麻が好演しています。

 それにしても、夏目雅子の演技は本当にすごいと感じました。優しい小学校の先生を演じていたかと思えば、一転して、田辺の死後に田辺家に押しかけ「なめたらいかんぜよ!」と吐き捨てる迫力ある演技をする、この映画を撮ったときは24歳くらいかと思われますが、そんな年齢でここまで変幻自在の演技を見せる女優さんは後にも先にもいないのではないかと思います。

 改めて惜しい女優さんを若くして失ったことを実感した作品でした。