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「スター・ウォーズ 特別篇」★★★

 いわずと知れた1977年製作のSF映画です。ジョージ・ルーカス監督が、黒澤監督の『隠し砦の三悪人』をモチーフにして作ったもので、登場人物やストーリー展開は数多く重なっています。

 帝国軍が銀河を統治する中、惑星アルデラーン出身で反乱軍のレイア姫は、帝国軍に捕らえられた。レイア姫は、捕らえられる直前に、忠実なロボットであるドロイドのR2-D2C-3POに帝国軍の秘密兵器デス・スターの設計図を託し、船外に脱出させた。

 2体のドロイドはタトゥイーンの砂漠に漂着する。そこで、ルーク・スカイウォーカーは、レイア姫オビ=ワン・ケノービなる人物に助けを求めている映像がR2に託されていることを知る。そして、砂漠に住む老人ベン・ケノービこそがそのオビ=ワン・ケノービであった。

 ルークとベンは、レイア姫の助けに応えるべく、腕利きの宇宙船船長であるハン・ソロを雇って、帝国との対決に向かい、レイア姫を救出する。

 反乱軍は、レイア姫の持ち出した設計図を解析し、デス・スターの弱点を突き止める。デス・スターは大型の武器による攻撃には万全だったものの、小型の武器からの攻撃には脆弱な部分があったのだ。ルークらは、小型の戦闘機に乗って、デス・スターの弱点をめがけて攻撃を仕掛け、デス・スターの爆破に成功する。そして、ルークらは、その功績を称えられて、レイア姫らから表彰された・・・。

 映像技術に関していえば、1977年という製作年を考慮しなければ今日とても見るに堪えないものであり、また、善悪をはっきりさせた勧善懲悪型のストーリーは、アメリカ人が大変好きそうなものであるものの、我々日本人の目から見ると偽善的な要素を多分に感じてしまいます。

 ただ、この映画の1つ面白い点は、日本文化に対する敬愛の念があちらこちらで感じられることです。冒頭に述べたように、そもそもこの映画のストーリー展開自体、黒澤映画から借用されたものですし、ベンとダース・ベイダーの戦闘シーンも日本の剣術そのものです。また、ルークらの衣服は柔道着のようなものとなっています。

 さらに面白いのは、東京大学浜野保樹教授の『模倣される日本』によれば、オビ=ワン・ケノービという名称は、「帯の一番は黒帯」という意味なのだそうです。そして、浜野教授はこんなエピソードを紹介しています。ヨーロッパのある映画祭にジョージ・ルーカス監督が、その会場に黒澤明監督がいることを知った。ルーカスは「なぜ、ここに黒澤がいるのだ」と驚いたところ、ルーカスの友人が「お前に著作権料をもらいに来たんだ」と冗談を言ったところ、ルーカスは慌てて逃げていってしまった・・・こんな話がハリウッドでは流布しているのだそうです。

 何はともあれ、こうして大監督が日本文化を持ち上げてくれていること自体、大変嬉しいことではあります。