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映画、書評、ジャズなど

「魔女の宅急便」★★★★

魔女の宅急便 [DVD]

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 ある村では、女の子が一定の年齢になると魔女になる修行のために箒に乗って知らない町に飛び立つ風習があった。キキもその風習に従って、満月の晴れた夜に、黒猫のジジと箒に乗って飛び立っていった。たどり着いた町でキキは、優しいパン屋さんのおソノの家に泊めてもらうことになる。

 キキは、持って生まれた魔法を生かして、宅急便を営むことになる。しかし、キキは、しばらくすると魔法の使い方を忘れてしまった。絶望に苛まれたキキに、魔法を取り戻すきっかけを与えてくれたのは、町で優しく声をかけてくれた男の子のトンボだった。キキは、制御を失った飛行船にトンボがしがみつき、そのまま空高く持ち上げられてしまったことをテレビで知る。キキは、トンボを助けるために、箒にまたがって必死に飛ぼうとした。すると、キキは以前の魔法を取り戻し、空高く飛ぶことができたのだった。そして、飛行船にしがみついていたトンボを危機一髪で救出した・・・。

 宮崎アニメは、現代人が忘れてしまったことや、軽視していることを題材として取り上げていますが、この映画では「魔法」が題材となっています。かつての人間社会の生活においては、宗教的な魔術が大きな位置を占めていたわけですが、マックス・ウェーバーが指摘したように、近代社会はそうした魔術からの脱却として捉えることができます。そのことが、近代科学を発展させたことはいうまでもありませんが、その反面で、近代社会は科学で説明できないものを軽視するという傾向を持つことになります。

 宮崎アニメでは、近代的な部分と前近代的な部分とが共存した不思議な人間社会が描かれていますが、近代的な生活にどっぷり漬かった近代人にとっては、そんな社会はなかなか魅力的に映ります。ときには、前近代的な要素が近代的な要素以上に役立つことだってあるわけです。近代社会が前近代社会に戻ることは不可能であったとしても、近代社会の中で、前近代的な部分をより多く取り戻した社会を構築することは、不可能ではないような気がします。

 この作品の中の魔術というのは、そうした前近代的な要素を象徴しているような気がします。

 まぁ、そんなややこしいことを抜きにしても、宮崎アニメは文句なく楽しめます。