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Cannonball Adderley「Somethin' Else」

 最近、ジャズに取り憑かれ気味なこともあり、ぼちぼち名盤の紹介をしてみたいと思います。

 初回は、「Somethin' Else」です。

Somethin' Else

Somethin' Else

 ジャズの名盤といえば、必ずといって良いほどトップランクに上げられる名盤です。
 ブルーノートと契約したキャノンボールのレコーディングに加わるようキャノンボールから頼まれたマイルスが「友情としてつき合った」もので、キャノンボールのアルト・サックスとマイルスのトランペットが見事に調和した美しい作品です。

 文句なく素晴らしいのは1曲目の「Autumn Leaves」(=「枯葉」)です。いろいろなミュージシャンが「枯葉」を演奏していますが、このアルバムほど素晴らしい「枯葉」はいまだ耳にしたことはありません。ピアノとベースの音が「ダン、ダ、ダ、ダン、ダン♪ダン、ダ、ダ、ダン、ダン♪」と始まり、続いてトランペットの割れるような叫びが続き、一瞬の静寂が訪れた後、再び静かにトランペットが奏でられる・・・。出だしの短い間に「静」→「動」→「静」と曲調が目まぐるしく変化します。
 それから、マイルスの物悲しい整然としたトランペットの演奏がしばらく続くと、キャノンボールのアルト・サックスが突然割り込んできて、マイルスの作った雰囲気をぶち壊し始めます。このマイルスとキャノンボールの掛け合いは見事です。

 それから2曲目の「Love For Sale」。これは私の大好きなジャズ・ナンバーの1つです。ハンク・ジョーンズの美しいピアノの演奏に続き、突如として軽快なメロディーが始まり、マイルスのトランペットが続きます。この出だしも、1曲目の「Autumn Leaves」に劣らず素晴らしいものです。しばらくマイルスの演奏が続いた後、キャノンボールのアルト・サックスが始まり、再びマイルスにバトンが渡されますが、ここでも、マイルスが作った雰囲気をキャノンボールがぶち壊すという構図は「Autumn Leaves」と同様で、素晴らしい聴き応えがあります。

 このアルバムが録音されたのは1958年ですが、個人的には、この頃のマイルスが一番輝いているような気がします。

 ただ、このアルバムが、実質的にマイルス・デイヴィスのアルバムだといわれるのは、キャノンボールにはいささか酷な気がします。もちろん、キャノンボールだけが傑出して光っているというわけではありませんが、マイルスがリーダーだったら、もっとマイルスのやりたいような砕けた作品になっていたような気がします。その意味では、キャノンボールがリーダーだったからこそ生まれた作品ということなのではないかと思います。

 ジャズの初心者でも、このアルバムから入れば間違いなくジャズを好きになる、そんなアルバムです。