- 出版社/メーカー: 東宝東和
- 発売日: 2002/05/24
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映画の舞台は80年代初頭の湖南省西部。最近でいえば“限界集落”のような山岳地帯の集落を数日間かけて郵便配達をしてきた父親が、ついに引退するときを迎え、跡継ぎとして自分の息子が配達をすることになった。父親はいつも配達にお供してきた“次男坊”と呼ばれている犬と息子を連れて、最後の配達にでかける。
息子はそれまで忙しい父親の仕事について深く理解していなかったが、一緒に配達に行って、父親の仕事に対する情熱やこだわり、そして、郵便配達を通じて培った人間関係などを理解する・・・。
チャン・イーモウの映画などでも、中国の発展に取り残された内陸の農村がしばしば取り上げられたりしていますが、中国の人たちの多くは、心のどこかにかつての農村社会への郷愁を感じているのでしょう。日本人が高度成長期におけるコミュニティの温かさに惹かれるのと近い感覚なのかもしれません。社会が急速な近代化を遂げれば遂げるほど、人々の郷愁の度合いは強くなるのでしょう。
この映画でも、中国の近代化に対する批判的な視点が垣間見られるような気がします。80年代初頭といえば、中国の内陸でも車が通るようになっていますが、この父親は車よりも歩きの方が確実だと言って、歩きでの配達にこだわり続けますが、そんなところにも、近代化へのアンチテーゼが込められています。
静かに時間が流れるものの、決して退屈な作品になっていないところに、この映画の素晴らしさがあります。