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映画、書評、ジャズなど

「めまい」★★★★☆

めまい [DVD]

めまい [DVD]

 これもヒッチコック映画の最高傑作の1つに数えられる作品です。

 場所はサンフランシスコ。刑事ジョン・ファーガスン(ジェームズ・スチュアート)は、同僚と2人で屋根づたいに犯人を追っていたが、屋根から転落しそうになったジョンを助けようと手をさしのべた同僚刑事が、屋根から転落してしまう。その事件をきっかけに、ジョンは極度の高所恐怖症となって刑事を辞める。

 無職となったジョンのもとに、かつての友人ゲビン・エンスターから連絡があった。その要件は、ゲビンの妻マドレイヌ(キム・ノヴァク)を尾行することだった。マドレイヌの曾祖母はかつて裕福な男との間にできた子供を男の本家に奪い取られたことから、狂って自殺してしまった。その奪い取られて子供がマドレイヌの祖母だった。

 ジョンが尾行したマドレイヌの行動は不可解なもので、美術館の曾祖母の絵をじっと眺めていたり、かつて曾祖母の家だったホテルを訪れたりする。そして、ある日、マドレイヌはゴールデンゲートブリッジの袂で突然海に飛び込んでしまう。尾行していたジョンは慌ててマドレイヌを海から救い出す。しかし、マドレイヌはそうした行動を覚えていないというのだった。

 そのうち、ジョンはマドレイヌの魅力に取り憑かれ、恋心を抱くようになる。ジョンは、マドレイヌをあるスペイン教会に連れて行くが、マドレイヌは突然教会の階段を上り出す。高所恐怖症のジョンは途中まで後を追ったが、目がくらんで追いつかず、結局マドレイヌは教会のてっぺんから転落して亡くなってしまう。

 失意に暮れるジョンは、ある日、マドレイヌとそっくりな女性ジュディ(キヌ・ノヴァク)を街で見つけた。ジョンはジュディに一緒に居てくれるよう必死に懇願するものの、ジュディは当初それを拒もうとする。

 なぜジュディはジョンを拒もうとしたのか。

 実は、ゲビンは自分の妻マドレイヌの殺害のアリバイを作るため、ジョンにマドレイヌに似た女性ジュディを尾行させ、ジョンが高所恐怖症で教会の建物のてっぺんまで辿り着けないことを利用し、教会の上から真のマドレイヌを突き落とし、マドレイヌが転落するところをジョンにわざと目撃させ、自分たちは騒ぎが収まるまで身を隠していたのだった。

 結局ジュディと親密になったジョンは、ジュディが身につけていたペンダントを手掛かりに、ジュディがかつて自分が尾行していた女性と同一人物だと知る。

 ジョンは高所恐怖症を克服し、ジュディを再びスペイン教会のてっぺんまで連れていき、詰問する。ジュディは恐怖に足を滑らせて教会から転落する・・・。


 ヒッチコックは、映画のスリルを高めるために、しばしば高所を活用しています。有名なところでは、『北北西に進路を取れ』の最後の場面でしょう。ラシュモア山の崖から転落しそうになるケンドルをロジャーが必死に引き上げようとする絶体絶命の場面の次の瞬間、ロジャーが寝台列車の上段にケンドルを引き上げる場面に切り替わり、観客は緊張から一気に解放され、ホッと胸をなで下ろすことになります。

 また、『レベッカ』でも、新妻が使用人のダンヴァース夫人にマンダレーの屋敷の2階から飛び降りるよう促される場面がありますが、これも高所を利用してスリルを高めたものです。

 この『めまい』では、ヒッチコックが好む高所が真っ正面から映画のテーマとなっているわけです。

 そしてさらに、建物の上から覗いたアングルで、カメラが遠ざかりつつズームアップするという有名な手法(「逆ズーム」というそうですが)が、スリル感を格段に高める効果を果たしており、正に、ヒッチコックの得意技であるカメラアングルが十二分に生かされた作品といえるでしょう。

 必見の映画です。