映画、書評、ジャズなど

「イヴの総て」★★★★

イヴの総て [DVD] FRT-019

イヴの総て [DVD] FRT-019

 1950年度のアカデミー賞で、作品賞、助演男優賞、監督賞など6つの賞を受賞した作品です。鑑賞後の後味は何と表現したらよいのか、直ちに思い浮かぶ言葉がありません。主演女優のアン・バクスターの映画の中でのあまりに見事な変貌ぶり、そしてそのあまりに裏表のある人間性を見せつけられて見る側は強烈なショックを与えられ、正に言葉を失ってしまうのです。

 大女優マーゴ(ベティ・デイヴィス)の楽屋にある日、イヴ(アン・バクスター)がカレン(セレステム・ホルム)によって通される。イヴはマーゴの強烈なファンで、毎晩マーゴの演技を見に来るイヴの姿を見たカレンが、マーゴに会わせてあげたのだった。イヴはマーゴに対して自分の恵まれない境遇を無垢な態度で蕩々と話し、マーゴの身の回りを手伝うことになる。イヴは熱心にマーゴの世話をし、マーゴのすべてを吸収しようと努める。

 しかし、話が進んでいくうちに、イヴの様子がだんだん変わっていく。イヴはマーゴの代役の座を手に入れる。さらに、マーゴの不遜な態度に愛想を尽かしていたカレンは、マーゴと一緒の自動車旅行からの帰りに、わざガソリンを抜き取って途中でガス欠を引き起こし、マーゴを舞台に遅刻させ、イヴをマーゴの代わりに舞台に立たせた。そのイヴの演技は評価されたが、イヴは取り上げた新聞記事の中でマーゴら先輩女優たちの批判を展開したのだった。

 イヴはさらに、カレンの夫である人気劇作家ロイド(ヒュー・マーロウ)との結婚を画策し、自分の女優としての地位を安泰なものにしようとするが、評論家アディスンに過去の嘘を暴かれる。

 しかし、イヴは、ロイドの舞台を成功させ、演劇界の名誉ある賞を受賞することになる。

 映画の終わりに、イヴの下にイヴに憧れた学生がやってきて身の回りの手伝いをする。その姿は、かつてのマーゴの身の回りの世話をしたイヴの姿とだぶるのだった・・・。

 映画の冒頭では、女優志望の初々しく無垢な女性を演じていたアン・バクスターが、映画の終わりには、不遜で尊大な女優へと変貌していく様は、本当に見事です。見る側は人間の内面の醜い面を眼前に突きつけられることで強烈なショックを受け、鑑賞後の後味は決して良いものとは言えないのですが、それがこの映画の持ち味でもあります。

 実は、多くの人たちがイヴのような秘めた内面を抱えながら生きているのかもしれず、だからこそ、それを突きつけられてショックを受けるのかもしれません。そういう意味では、多くの人たちにとって、この映画は良き反面教師なのかもしれません。

 ちなみに、この映画にはマリリン・モンローがちょい役で出ているそうですが、私は気がつきませんでした。