CIAの創設期における、ある工作員の職務を巡る様々な葛藤を描いた長編映画です。職務に忠実なあまり家族関係を犠牲にしてしまったCIAスパイの物語なのですが、そのツケが映画の最後に自分に降りかかってくる見事なストーリー展開には脱帽です。
話は、1961年のビッグス湾事件におけるCIAの失敗の場面から始まります。この事件は、キューバのカストロ政権がソ連と急接近していることを怖れたアメリカが、亡命キューバ人部隊を使ってキューバに上陸させようとしたものの、大量のキューバ部隊に阻まれて失敗に終わった事件で、当時のケネディ大統領はもともとこの作戦に乗り気ではなく、しかもCIAの事前の評価報告が不十分であったため、作戦を失敗させたCIAに激怒したということで、ケネディ暗殺事件との関係についても様々な憶測を呼んでいる事件です。
映画では、事前にピッグス湾という上陸地点が漏洩したという設定で、CIA内部でその犯人捜しをしていたところ、エドワード・ウィルソン(マット・デイモン)の下に、上陸地点をベッドの上で男が女に伝えているところを盗撮した映像が届けられた。それはCIA内部に内通者がいたことの証左であり、エドワードは直ちにその真相を解明するよう指示する。
映画の場面は、ピッグス湾事件の後の時点と、ウィルソンがCIAに入って中で活躍を続ける場面とが交互に登場していきます。
ウィルソンは、イェール大学時代に、格別のエリートだけから構成される秘密結社スカル&ボーンズのメンバーに選ばれた。エドワードは、このスカル&ボーンズのパーティーである上院議員の娘であるクローバー(アンジェリーナ・ジョリー)と結ばれ、クローバーが妊娠したことから、2人は結婚する。しかし、その後すぐにウィルソンは息子の顔を見ることなくロンドンに赴任する。
その後、ウィルソンとクローバーは長らく離ればなれの生活を送り、2人の心は離れていく。そんな中、ウィルソンは国家への忠誠心によって職務を遂行していた。
そして、大人に成長した息子のエドワードJrも、父親と同じくCIAへの道を選び、ピッグス湾事件が起こった頃にはすでに海外で活躍していた。エドワードはピッグス湾事件の情報漏洩を突き止めるために、情報が漏洩されたと思われたコンゴまで飛んだ。そこには、ソ連のKGBから亡命してきた人物が待ち受けており、そこでエドワードは自分の息子がピッグス湾の上陸地点を漏洩した張本人であるという衝撃的な事実を告げられた。しかも、その人物は引き続きKGBのスパイであり、エドワードはその人物から息子を守る代わりに自分に協力することを要請された。
エドワードは国家への忠誠心と家族への思いとの間で葛藤する。しかし、彼は結局、敵側への協力を拒否し、CIAの中で生き続けていく選択をする・・・。
この映画を見て思い出したのは、グレアム・グリーンの『ヒューマン・ファクター』です。
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細部はやや掴みにくいところが多々あることは事実ですが、そうした点を考慮しても、スパイ映画としては最高ランクに位置づけられる作品の一つではないかと思います。