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「お熱いのがお好き」★★★★★

 禁酒法時代のアメリカ社会を舞台にした痛快ドタバタコメディーです。1920年代のバブルが崩壊する直前の1929年という時代設定で、フロリダの土地や株式に対する人々の熱狂がシニカルに描かれています。

 冒頭、棺を運ぶ車が警察から襲撃を受ける。棺の中には大量の酒が隠されており、棺は葬儀屋に持ち込まれる。葬儀屋の入口はパイプオルガンの音楽で厳かな雰囲気が漂う。ところが、その奥のドアを開けた途端、バンドが派手に演奏し踊り子が踊りまくるにぎやかな酒場が営まれていた。

 素晴らしいオープニングのシーンです。

 酒場は別のギャングの裏切りによって警察の急襲を受けるが、その仕返しとして、裏切ったギャングは酒場を経営していたギャングによって殺されてしまう。酒場のバンドで働くジョー(トニー・カーティス)とジェリー(ジャック・レモン)は、たまたまその仕返しの場面を目撃してしまったことから、ギャング・グループに追われる身となってしまう。

 2人は、たまたまベースとサックスのプレイヤーを募っている女性だけのオーケストラ・バンドがあることを知り、遠くへ逃げるために、名前をそれぞれジョセフィン、ダフニと変え、女装してその女性バンドに潜り込み、フロリダに向かう。

 その女性バンドでは、妖艶な金髪の美女シュガー(マリリン・モンロー)が歌い手を務めていた。シュガーは、フロリダでお金持ちを見つけて結婚することを望んでいた。シュガーに惚れたジョーは、フロリダに着くと、石油会社社長の大富豪の息子のふりをして、シュガーに近づく。他方、ジェリーはといえば、中年の大富豪オスグッド3世に惚れられ、つきまとわれる。

 そんな生活を送っているとき、2人を追っているギャングがフロリダにやってきた、2人は女装を見破られてしまい、フロリダを離れなくてはならなくなったことから、オスグッド3世のボートで脱出を図る。ジョーは、石油会社の御曹司と女装したジョセフィンとは実は同じ人物であることをシュガーに気づかせる。

 シュガーはジョーを追ってボートに飛び乗る。シュガーは、ジョーの正体を知った後でもその愛情は変わっていなかったのだった。

 最後、ジェリーもオスグッド3世に自分が男であることを告白するが、彼は全然動じない。実は、彼はジェリーが男であることを知っていた上でジェリーに惚れていたのだった。彼が最後に一言。

「誰でも完全な人間なんてありはしない。」

 とにかく、この映画には、娯楽の要素がふんだんに盛り込まれていて、最後まで全く見る人を飽きさせません。その中心にいるのはもちろんマリリン・モンローです。マリリンの妖艶な歌のシーン、ジョーに色っぽく迫っていくシーン、サックスを吹く男に惚れてしまうという悩みを打ち明けるシーン、いずれも彼女にしかできない演技です。

 喜劇の最高傑作の一つだと思います。