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与謝野官房長官退任に当たっての発言

 産経WEBによれば、9月25日午前の与謝野官房長官の記者会見で、次のような発言をされているようです。
産経ニュース

【安倍内閣と福田内閣
 −−安倍内閣から福田内閣への転換というのは、後世から評価すると、どう位置づけられるか
「そうですね。それは後世の史家がどう評価するのかということを、今から予想するという話になるんで、大変難しい話なんですが、やはり新古典派が言っていたような、少数の勝者と多数の敗者というようなイメージというのは、安倍さんはそんなことを言っていないが、そういう市場が全てを決めるんだという原理主義的な考え方というのは、おそらくこれを機会に薄らいでいくんじゃないかと思います」

 政府の関係者がここまではっきりと新古典派の考え方を否定している発言は、小泉構造改革の旋風が巻き起こって以来、ここ久しくはほとんどなかったのではないかと思われます。おそらく与謝野官房長官も、内心では小泉−安倍路線を苦々しく見ていたことが窺える発言です。

 渡辺治氏の『安倍政権論』の中でも述べられているように、安倍政権の支持基盤としては、一般に、保守派の人々が知られているわけですが、
渡辺治「安倍政権論 新自由主義から新保守主義へ」 - loisir-spaceの日記
実は、規制緩和を始めとする構造改革を熱烈に支持する財界や米国政府が確固たる支持基盤であったわけで、この面では小泉路線をほとんど完全に継承していたといえるわけです。

 安倍政権を支えるべき立場にある与謝野氏が、安倍政権から福田政権への転換の評価として、新古典派の考えや市場原理主義の崩壊を真っ先に挙げているという事実は、実は、与謝野氏は安倍総理の掲げていた政策路線の根幹について何らの共感を持っていなかったことが図らずも証明してしまったのではないかと思います。

 個人的には、与謝野氏のこの指摘は相当程度当たっているような気がします。