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「金色夜叉」★★★☆

金色夜叉 [VHS]

金色夜叉 [VHS]

 週末、熱海に滞在する予定なのですが、熱海といえば金色夜叉・・・ということで、今回は島耕二監督の「金色夜叉」です。

 高等中学生の間貫一(根上淳)の許嫁であったお宮(山本富士子)は、資産家の富山から熱烈な求婚を受ける。お宮の両親は、娘を資産家と結婚させることを望み、お宮を説得する。

 お宮は富山と連れだって熱海に出かけるが、貫一はお宮の心境を直接聞きたいと考え、熱海まで追いかける。お宮の心は揺れ動いていたが、そんなお宮の態度を見て貫一は激昂し、熱海の海岸で追いすがるお宮を足蹴にする。

 こうしてお金の力によって痛い目に遭わされた貫一は、人柄が大きく変わり、高利貸しの手代となって、弱者から容赦なく借金を取り立てるようになる。かつての友人たちは、そんな貫一の姿が信じられなかった。

 他方、富山の元に嫁いだお宮も、富山から執拗に冷たいあしらいを受け、不幸な日々を送っていた。

 その後貫一は独立して大きな邸宅を構えるが、それを知ったお宮は貫一に会いに行くものの、貫一はお宮に心が振れることはなかった。

 ある日、貫一の邸宅は、貫一からの借金に苦しんでいた老婆によって放火される。お宮はいち早く貫一の邸宅に駆けつけ、貫一に慰めの言葉をかけるが、貫一はそんなお宮を突き放した。絶望したお宮は池に入水して自殺を図るが、それに感づいた貫一はお宮を池から助け出し、お宮に許しを乞うところで映画は終わる・・・。

 この映画の原作は尾崎紅葉が明治30年の元旦から読売新聞に連載を開始したものですが、結局、未完のままに終わっているとのことです。

 驚くべきことに、wikipediaによれば、この「金色夜叉」は、極めて頻繁に映画化・テレビドラマ化されていることです。
金色夜叉 - Wikipedia

 金を取るべきか?真の愛を取るべきか?、というテーマは、それだけ人々にとっては永遠のテーマなのかもしれません。

 この話で最も印象的な箇所は、やはり、熱海の海岸で貫一がお宮に投げかける次のセリフでしょう。原作から引用しておきます。

「一月の十七日、宮さん、善く覚えてお置き。来年の今月今夜は、貫一は何処でこの月を見るのだか! 再来年の今月今夜……十年後の今月今夜……一生を通して僕は今月今夜を忘れん、忘れるものか、死んでも僕は忘れんよ! 可いか、宮さん、一月の十七日だ。来年の今月今夜になつたならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから、月が……月が……月が……曇つたらば、宮さん、貫一は何処かでお前を恨んで、今夜のやうに泣いてゐると思つてくれ」(原作より)