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「シャイニング」★★★☆

シャイニング 特別版 コンチネンタル・バージョン [DVD]

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 スタイン・キューブリック監督による1980年の作品です。

 夜中に1人で見ない方がよい映画です。

 映画の舞台は“展望ホテル”という名のコロラドの山の上に立つホテル。このホテルは冬になると雪深くなるため、ホテルは閉鎖する。ジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)は、そんな誰もいない冬期の“展望ホテル”を、妻のウェンディ(シェリー・デュヴァル)と息子のダニー(ダニー・ロイド)の3人で管理を任されることとなった。

 このホテルは曰く付きのホテルで、前任の管理者グレイディは発狂し、妻と2人の娘を殺害し、自らも銃で自殺していた。ジャックは事前にその話を聞いてはいたが、自分は新作の本を書くために孤独な環境の方が好都合だと考えていた。

 しかし、いざ3人で暮らし始めると、様々な奇怪な現象が起こる。息子のダニーは超能力を持っており、殺されたグレイディの2人の娘に遭遇する。そして、大量の血が洪水のように溢れてくる光景を目にする。ある日、237号室のドアが開いていたため、ダニーは中に入るが、そこで見知らぬ女に首を絞められけがをする。ダニーは人が変わったようになり、“REDRUM”とつぶやき続ける。それは、後ろから読めば“MURDER”となる・・・。

 ジャックも次第に気が滅入り始め、妻のウェンディに当たり散らすようになる。ある日、パーティー・ルームに行くと、そこではやっているはずのない盛大なパーティーが開かれていた。そして1人のウェイターがジャックにぶつかってきて、飲み物をかけてしまう。ジャックはウェイターの顔に見覚えがあった。それは、新聞で見かけた殺人犯グレイディであった。グレイディはジャックに、ウェンディとダニーを「しつける」ように促す。

 ある日、ウェンディはジャックが日々タイプライターで打っている紙を見てみると、そこには、“All work and no play makes Jack a dull boy.”(仕事ばかりで遊ばないジャックは今に気が狂う。)という文章が延々と書きつづられていた。これを見られたジャックは、ウェンディとダニーの殺害を謀る。ジャックは通信手段を遮断し、唯一の交通手段である雪上車も壊してしまっていたため、ウェンディらには逃げる術がなかったが、ホテルでの異常を察知した料理長ハロランが下界から雪上車に乗って駆けつけた。しかし、ハロランはジャックに斬りつけられて殺されてしまう。

 ウェンディとダニーは命からがら、ハロランが乗ってきた雪上車に飛び乗って逃げた。2人を追っていたジャックは、翌朝、外で凍り付いていた・・・。

 閉ざされた空間の中でじわじわと迫ってくる恐怖を、この作品では巧みに描いているように思います。何と言っても、ジャック・ニコルソンの眼光鋭い目つきが、だんだんと発狂していく主人公にぴったりとはまっています。

 そして、四方田犬彦氏によれば、この『シャイニング』という映画は、実は、村上春樹氏の小説『羊をめぐる冒険』に多大な着想を与えているようで、村上氏はキューブリックを自分の偏愛する監督のひとりとして考えているとのことで、やや意外な感じがしました。

 確かに、『シャイニング』では、妻のウェンディが熊の着ぐるみを着た人間に遭遇する場面がありますが(ほんの一瞬ですが)、これは「羊男」の姿を彷彿とさせる気もします。

 この監督の他の作品、例えば『2001年宇宙の旅』★★☆

2001年宇宙の旅 [DVD]

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などは、どうしてもなじむことができませんでしたが、この作品はこれに比べれば、キューブリック監督のセンスがほどほどに盛り込まれていて、楽しめる作品です。