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映画、書評、ジャズなど

「雨月物語」★★★★☆

雨月物語 [DVD]

雨月物語 [DVD]

 1953年にヴェネチア国際映画祭の銀獅子賞を受賞した溝口健二監督の代表作の1つです。

 全編を通じて、背筋が凍るような緊張した空気が張りつめた作品です。

 琵琶湖の北岸の農村に住む源十郎(森雅之)とその弟藤兵衛(小沢栄)は、戦による景気の中で、本業の片手間に作った陶器が大売れし、大金を手にしたことで、金の亡者となる。
 2人は源十郎の妻宮木(田中絹代)と1人息子、そして藤兵衛の妻阿浜(水戸光子)を連れて、戦の中危険を冒して琵琶湖を渡って陶器を売りさばきに町へ向かうが、途中、盗賊が出現したという報を耳にしたことから、源十郎は妻宮木と息子を村に引き返させた。

 町に着いた藤兵衛は、かねてから武士になって一旗揚げたいとたくらんでおり、稼いだ金で武具を購入し、敵の大将の首を奪い取って手柄とし、出世を果たす。他方、藤兵衛の妻阿浜は、藤兵衛が出世にうつつを抜かしている間、遊女に落ちぶれてしまっていた。

 一方、源十郎は、若狭と名乗る高貴な娘(京マチ子)とその乳母に屋敷に誘われ、若狭と結婚の契りを結んで、妻子を忘れて楽しい日々を送る。しかし、それは戦火で滅んだ一族の死霊であった。

 源十郎は、道行く僧侶から死相が出ていることを指摘され、若狭との生活にピリオドを打って妻子の下に帰ることを決意した。村にたどり着くと、妻宮木は温かく源十郎を迎えたが、一晩経って朝起きてみると妻宮木の姿はなく、村人から妻宮木は落武者によって殺されていたことを聞かされ、昨晩の時点ですでに亡くなっていたことを知る。

 出世を果たした藤兵衛も、御祝儀で立ち寄った遊郭で遊女として働いている妻阿浜に遭遇し、自分の振る舞いを反省する。

 源十郎と藤兵衛は、一攫千金を目指す生活をやめ、元の堅実な生活に戻っていく・・・。

 淀川長治氏は、溝口健二監督について、

「女、女、女を描いたら天才。まさに大人、映画の文豪ですよ。」

と述べていますが、この『雨月物語』も実は主役は女性陣のような気がします。女性たちは平凡な生活を望んでいるのに対し、そんな女性たちの思いを無視して身勝手に一攫千金を狙う男たちが罰を受けるというわけで、女性の目線でストーリーが描かれています。

 京マチ子演じる若狭も絶品です。こういう役をやらせたら、誰にも負けないという気がします。

 そして、男たちが夢を見て好き勝手に行動し、大事なものをいろいろ失い、最後は元の落ち着いた生活に戻り平凡な幸せを実感するというのも、何か現代に通じるメッセージがあるように思います。

 最後まで飽きさせない絶妙な脚本といい、霧が霞む琵琶湖の美しい映像といい、日本映画の1つの頂点を極めた作品と言ってもよいのではないかと思います。