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映画、書評、ジャズなど

「汚名」★★★★☆

映画

汚名 [DVD] FRT-036

汚名 [DVD] FRT-036

 これぞヒッチコックの神髄を極めたような映画です。スリル、迫力、ラブロマンスといった要素をすべて最大限に盛り込み、ヒッチコックならではのカメラワークの技術が最大限に発揮された究極のサスペンスです。

 米国人であるアリシアイングリッド・バーグマン)の父はドイツのスパイの疑惑をかけられ、獄中で死ぬ。CIAのデブリン(ケイリー・グラント)はそんなアリシアをリオに連れて行くが、そこでアリシアは、ドイツ人セバスチャンに近づいてその屋敷へ潜入し、極秘情報を諜報するミッションをCIAから打診される。デブリンを愛するアリシアはその打診を断ることができず、デブリンへの愛情と板挟みに遭いながら、結局、セバスチャンと結婚までして、CIAの諜報活動を遂行する。

 ドイツ人たちが集まるセバスチャン邸で、アリシアは、ワインのボトルに対して過剰に反応した人物を目撃したことで、ワインのボトルに何らかの秘密が隠されていることを知るが、ワイン倉庫だけはセバスチャンが厳重に鍵を管理していた。そこで、アリシアは、こっそりとセバスチャンの鍵を盗み出し、セバスチャン邸で開かれたパーティーの最中に、デブリンとともにワイン倉庫に侵入し、ワインボトルの中身がウラニウムの原鉱であることを突き止める。

 しかし、セバスチャンは、アリシアが米国のスパイであることに気づく。だが、米国のスパイとまんまと結婚して秘密を盗まれたことがドイツ人の仲間に知られれば、セバスチャンは仲間から殺されてしまう。そこで、セバスチャンは、アリシアに徐々に毒を盛ることで、アリシアを衰弱させて死亡させることを目論む。

 アリシアの命に正に危機が迫っていた時、スペインへの転勤が決まっていたデブリンはセバスチャン邸に駆けつける。そしてデブリンは、セバスチャンのドイツ人の仲間がいる前で堂々とアリシアを連れ出すが、セバスチャンは米国人のスパイと結婚しているという事実をデブリンにばらされるのを恐れて、アリシアが連れ出されるのを止めることができなかった。


 デブリンに対する愛ゆえにセバスチャンと関係しなければならないアリシアの心の葛藤が描かれ、なかなか自分に対する愛をはっきりと言わないデブリンが最後にアリシアへの愛情を告白するなど、映画の中にはラブ・ロマンスの要素がふんだんに盛り込まれています。

 また、スパイであることを知られたアリシアの身にじわじわと危険が迫っていくのは、ヒッチコックのお得意の手法といえるでしょう。

 また、この映画は随所において巧みな細工が施されており感心させられます。セバスチャンのワイン倉庫の鍵を盗み出したアリシアは、鍵を左手に握っているときにセバスチャンが近づいてくる。そして、セバスチャンがアリシアの右手にキスをし、次は左手にキスをしようとしたときに、アリシアは素早くセバスチャンに抱きつき、セバスチャンの背後で鍵を地面に落として、足で鍵を蹴って机の下に隠す。こういう巧く作られた映像構成によって、見る側は一層手に汗握ってはらはらしてしまいます。

 とにかく、ヒッチコックの映画の良さがすべて盛り込まれているといってもよい作品であり、ケイリー・グラントとカサブランカイングリッド・バーグマンという俳優陣の組み合わせも文句なしです。

 ヒッチコック映画の中でも間違いなく上位にランキングされる作品です。