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「キル・ビル」★★★☆

 タランティーノ監督の日本映画好きを思いっきり反映していて、とにかく日本テイストがふんだんに盛り込まれた作品という感じです。

 4年間の昏睡から目を覚ましたザ・ブライド(ユナ・サーマン)は、かつて自分の結婚式で襲った連中への復讐を図る。当時彼女のお腹には子供がいて、ザ・ブライドはお腹の子供も一緒に殺されたと信じている。彼女は、沖縄に飛び、長年刀の制作をやめていたハットリハンゾウに頼み、鋭い刀を作ってもらった後、東京でヤクザのボスを務めるオーレン・イシイ(ルーシー・リュウ)との復讐戦に挑む・・・。

 冒頭にこの映画が深作欣二監督に捧げられていることが象徴しているように、この映画はタランティーノ監督の日本映画に対する敬意が存分に反映されています。

 戦闘シーンは“サムライ”の要素がふんだんに盛り込まれています。また、映画の中では、日本語で会話が交わされるシーンもたびたび出てきており、しかも、肝心な台詞が日本語だったりします。かなり日常会話というか、俗っぽう日本語も多々登場し、オーレン・イシイの「やっちまいな!」という台詞がその典型でしょう。オーレン・イシイとの決闘シーンが終わった後、バックに演歌調の音楽が流れるのには度肝を抜かれます。

 この映画では、ただ単純に日本文化を描写しているのではなく、日本人のオーレン・イシイの役をルーシー・リュウが演じていたり、和風の建物の中でかたや2階の座敷で宴会、かたや1階ではバンドがゴーゴーを演奏しているというギャップが不思議な空間を醸し出していたりと、様々な文化テイストが加味されたものであり、途中、どこの国の映画を見ているのか分からなくなります。

 東京大学浜野保樹教授が書かれた『模倣される日本』によれば、この映画に対する影響は、次のような感じです。

 演出も随所に斬新さがあります。途中、回想シーンが長時間のアニメ劇画として挿入されていたり、刀で切られた後の鮮血の描写は独特です。

 血なまぐささがあまりにも多いのには辟易してしまいますが、この映画のアイデンティティの1大要素なので仕方ないかもしません。

 何か怖いものを見たような後味ですが、よくできた意欲的な作品です。