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国土交通省「国内旅行需要喚起のための休暇のあり方懇談会」報告書

 国土交通省の標記懇談会が「国内旅行需要喚起のための休暇のあり方について」が発表されました。

 報告書の骨子は、以下のとおりとなっています。

(報告書の骨子)
(論点1)
○いま何故、休暇か。いま何故、国内旅行の振興か。これらの戦略的視点を明確にする。
(論点2)
○休暇取得を制度的に「義務化」するのではなく、好事例の紹介や現実的なインセンティブなどにより、生産性を高めつつ休暇取得を促進するという方向をめざす。
(論点3)
○休暇取得を国内旅行の促進に繋げるためには、「旅に出よう」と思う国民ニーズを直接、刺激するような需要サイドに立った施策を促進するという考え方を重視する。
(論点4)
○その際、戦略のターゲット層(ここが動けば休暇取得促進と国内旅行振興に繋がる)を明確にし、効果的な施策を推進する。

 方向性として、休暇が旅行の振興につながるという発想は全く異論はないのですが、ただ致命的な問題点は、(論点2)に示されたその実現方策です。

(論点2)
○休暇取得を制度的に「義務化」するのではなく、好事例の紹介や現実的なインセンティブなどにより、生産性を高めつつ休暇取得を促進するという方向をめざす。

 そもそも休暇取得促進については、我が国においても何十年も前から問題となっているわけで、好事例の紹介で休暇の取得が進むのであれば、とっくに実現されているはずでしょう。

 なぜ休暇取得が進まないかといえば、それは企業の側が従業者の休暇取得を進めることにさほどのメリットを感じないからです。つまり、企業の側に、従業者に休暇をより取得させるインセンティブが働いていないのです。したがって、いくら好事例を紹介したところで、何か強制的な力が働かない限り、休暇取得が進む見込みはほとんどないというのが、これまでの経験則が物語るところです。

提案
年次有給休暇の取得促進
労働者が年次有給休暇を取得しやすいようにするため、計画的な休暇取得の普及・促進、好事例の紹介や意識啓発活動を推進する。

【具体的な推進の方向性】
計画的年休取得の普及・促進のためには、労使協議などの結果を踏まえて、労働者側が主体的に計画的取得の取組を進め、これを経営側が支援するといった仕組みができることが望ましい。特に、休暇取得カレンダーの作成や配布など、取得状況の管理と自主的な社内外公表といった具体的取組を進めることが重要であり、引き続き労働時間等設定改善援助事業等を実施し、計画的年休取得の支援等を行う。

とありますが、これで休暇取得が進むとはあまり思えません。この報告書全体が「自主」を大変強調しているのですが、どうみても、企業側に配慮した報告書としか思えません。休暇の取得には、やはり義務的ないしはそれに匹敵するような思い切った措置が必要なのです。

 方向性には賛同できるだけに、残念です。