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「カサブランカ」★★★★

カサブランカ<特別版>【字幕版】 [VHS]

カサブランカ<特別版>【字幕版】 [VHS]

 1942年にアメリカで制作された映画です。言わずとしれた、アカデミー賞作品賞受賞作で、全く期待どおりの素晴らしい内容でした。

 映画の舞台は第二次世界大戦中の仏領モロッコ。そこは、アメリカに逃れようとする人びとが集まる都市で、金と運があればそれが実現できたのでした。パリから戦火を逃れてきた主演のハンフリー・ボガートはそこでナイトクラブを経営していました。そこにやってきたのは、同じくパリから戦火を逃れてきた反ナチの活動家だったのですが、その連れのイングリッド・バーグマンは、ボガートとかつてパリで恋に落ちた仲でしたが、実はその活動家とすでに婚姻関係を結んでいました。バーグマンは何とか自分たち夫妻を出国させてくれるようボガートに懇願し、ボガートの心中には当然葛藤が生まれます。バーグマンは一時、ボガートととものモロッコに残る決断をしますが、結局ボガートは旦那とともにバーグマンをアメリカへ出国させることになります。それがナチスに占領されているフランスの解放にもつながると判断したのです。

 この映画が作られた1942年は、まだパリはナチスの占領下にありました。その中で作られた映画ならではの迫力がこの映画にはあります。ヴィシー政府を率いたペタンを始め多くのフランス人がナチスの占領に協力したことが、今日においてもフランス人にとって消しがたい汚点として残っているようです。この映画に出てくるモロッコの警察署長も、ドイツの将校に従順さを示していたわけですが、最後には、バーグマンらを出国させたボガートを救うことになります。

 ボガートの経営するナイトクラブでドイツの将校たちがドイツの歌を歌っているとき、ボガートはそれに対抗してフランスの国歌を演奏させ、最後はフランス国歌の合唱によってドイツの歌がかき消されてしまうシーンは極めて印象的です。ボガートのナイトクラブはこの件で営業を停止させられてしまうのですが、これまで政治的な活動に無関心を装ってきたボガートが、内に秘めた政治的思想を吐露してしまった瞬間です。

 祖国を思う気持ちと恋愛感情が時代背景と見事にマッチして交錯する素晴らしい映画でした。文字通り映画史上に名を残すに値する映画でした。