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まず、元の映画である「インファナル・アフェア」★★★★★についてですが、この映画は、とにかく抜群に面白い映画でした。
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2人の主人公がそれぞれ2つの立場を使い分けながらストーリーが展開していくため、ストーリーはやや入り組んだものとなっているのですが、見れば見るほどストーリーが巧妙に作られていることが分かります。特に、ラウが次第にマフィア組織から心が離れていく様は、感情移入しながら見ることができました。まさしく、香港映画の最高傑作の1つであると言っても過言ではないと思います。
こうしたオリジナルに対する高い評価を前提として「ディパーテッド」を見てきたわけです。所々では、ハリウッドなりの脚色がなされていました。「ディパーテッド」では、警察から犯罪組織に送り込まれるのはディカプリオ演じるビリー・コスティガンであり、犯罪組織から警察組織に送り込まれるのがマット・デイモン演じるコリン・サリバンとなっています。2人は、ボストン南部の通称「サウシー」と呼ばれる出身です。この地域は犯罪組織が蔓延っており、警察組織はこの犯罪組織を切り崩すため、ビリーを犯罪組織のボスの下へと送りこむわけです。
ところで、アメリカ社会においては黒人に対する差別が根強く残っていることは知られていますが、白人の中にも差別を受けている階層が存在します。それはアイリッシュ系の白人たちです。この映画の中の犯罪組織も、アイリッシュ系の犯罪組織として描かれています。主人公の2人ともこのアイリッシュ系出身であるとう設定が、「ディパーテッド」と「インファナル・アフェア」との決定的な違いであり、ハリウッド版の特徴的な設定となっているわけです。
ちなみに、こうしたアメリカ社会における白人間の格差を描いた本としては、慶應義塾大学の渡辺靖教授の『アフター・アメリカ』があります。
- 作者: 渡辺靖
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また、少し前に話題となった映画「ミスティック・リバー」★★★★も、ボストンの貧困地域を舞台として描かれたものです。
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また、最後、コリン・サリバンが犯罪組織のボスを裏切って殺すシーンは、この映画のストーリーにとっては最も重要な「核」となる部分のはずですが、もう少し切実な裏切りの理由があってもよかったのではないかと思います。「FBIに内通していた」というのでは、少し説得力に乏しく、ストーリー展開の中でも唐突な感じが否めませんでした。
さらに、「ディパーテッド」では、2人の主人公が共通の女性に惹かれていくのですが、正直、ビルがなぜこの女性にそこまで惹かれなければならないのかを理解することは困難でした。
リメイク版の映画を見る場合に、オリジナルと比べながら見るのはあまりフェアではないのかもしれませんが、正直、両者を比べると、オリジナルの巧妙なストーリー、登場人物の心理の描き方等々、オリジナルに圧倒的な軍配が上がるのではないかという気がしました。
この映画がアカデミー賞「作品賞」というのは極めて意外である反面、ハリウッド映画として見れば、まぁそんなものかという気もしました。
ちなみに、スコセッシ監督は、この映画について「本当はこの映画を作りたくなかったんだ」「私はB級映画のような精神で、この『ディパーテッド』を撮ったにすぎないんだ。ところが、観客や批評家が予想外に評判がいいんで、とても驚いている!」と述べているようですが、なんだかその気持ちが分かるような気がしました…。