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「ブラッド・ダイヤモンド」★★★★

 この映画は、探鉱労働の中で巨大なダイヤを見つけてそれを隠し持つ男を巡って、デカプリオ演じるダイヤの密売人たちが奮闘するものですが、この映画の舞台であるアフリカのシエラレオネでは、ダイヤモンドを巡る過酷な内戦が現実に繰り広げられてきました。実際に多くの子供たちがRUF(革命統一戦線)の手によってさらわれ、洗脳された上で、真の親との間の戦闘に駆り出されるといったことが起こっていたようです。そして、こうした内戦を引き起こしているのは、ダイヤモンドの利権を牛耳り、内戦の当事者たちに戦闘資金を提供している欧米の企業であるというアフリカの内戦の構造を見事に暴いています。

 この映画を見て改めて感じたのは、アフリカの戦争の残虐さです。アフリカの戦闘ではすさまじい数の人間が犠牲になります。例えば、ルワンダの内戦では100万人が犠牲になったと言われていますが、他の地域における昨今の戦闘と比べてみても、想像を絶する数です。
 しかも、アフリカの戦闘では少年兵が多いことも特徴的です。これらの少年兵の多くは、誘拐されてきたり、強制的に徴用された子供たちと言われています。こうした少年兵は、幼少の頃から洗脳を受けているわけですから、社会復帰はそう簡単ではなく、なかなか情勢が安定化しない要因といえるでしょう。
 殺し方も残虐です。戦闘行為に参加できないよう、平気で手足を切り落としたりします。それも親族の前で行われることもあるようです。

 もちろん、こうしたアフリカの戦闘の残虐性を、アフリカの民族性のせいにすべきではないでしょう。それは、アフリカの過去の悲惨な歴史の延長で考えるべきであるし、そうした歴史をアフリカに押しつけてきたのは、他ならぬ欧米諸国です。そして、今日でも欧米諸国は、アフリカの資源を搾取する構造は存続しており、グローバルな資本主義体制の中でアフリカ諸国はいつまで経っても貧困から抜け出すことができないわけです。

 今では、シエラレオネの政情はだいぶ安定化しているようです。国連PKOによる武装解除などの支援も行われ、シエラレオネはPKOの成功例とされています。しかしながら、絶対的な貧困や汚職の体質など社会の構造的な問題は解決からは程遠い状況と言えるでしょう。

 この映画は、そんなアフリカ社会の問題の根の深さを思い知らせてくれました。