映画、書評、ジャズなど

カルロス・ルイス・サフォン「風の影」

風の影 (上)(下)巻セット (集英社文庫) 集英社 Amazon バルセロナを舞台にしたとても味わい深い作品です。 バルセロナの古書店主の息子ダニエル少年は、父親に連れられ、「忘れられた本の墓場」に行く。そこで偶然手にしたのが、フリアン・カラックスという…

中山七里「護られなかった者たちへ」

護られなかった者たちへ 作者:中山 七里 NHK出版 Amazon 生活保護を巡るトラブルに起因する殺人事件を扱った作品です。 福祉保険事務所の関係者2人が次々と餓死という残虐な手法により殺害される。いずれも恨みを買うような人物ではなかった。2人は生活保護…

逢坂剛「百舌の叫ぶ夜」

百舌の叫ぶ夜(百舌シリーズ) (集英社文庫) 作者:逢坂剛 集英社 Amazon 逢坂剛氏の作品は初めて読んだのですが、とても巧妙に作られたミステリー作品でした。百舌シリーズの第2弾です。 能登半島で記憶喪失の男が発見される。その男は、ヤクザの関連する会…

手嶋龍一「武漢コンフィデンシャル」

武漢コンフィデンシャル 作者:手嶋龍一 小学館 Amazon 元NHKの著者による作品です。 武漢と香港を結び付ける女性実業家、オックスフォード卒業生のインテリジェンス・ネットワークを効果的に物語に生かしつつ、コロナの発生源の謎が解明されていく作品と…

遠藤周作「深い河(ディープリバー)」

深い河 新装版 (講談社文庫) 作者:遠藤 周作 講談社 Amazon 著者の宗教観が色濃く反映した作品です。亡くなる前の闘病中に描いた作品ということもあり、とても深遠なテーマではありますが、読みやすい作品です。 本作品に登場する人々は、それぞれの企図をも…

月村了衛「欺す衆生」

欺す衆生 (新潮文庫) 作者:月村 了衛 新潮社 Amazon 機龍警察シリーズがとてもスリリングで面白かったので、著者の本作品を読んでみたのですが、これがまたとてもよくできていて大変面白く、あっという間に読み通してしまいました。 この作品は、かつて日本…

ドン・ベントレー「シリア・サンクション」

シリア・サンクション (ハヤカワ文庫NV) 作者:ドン ベントレー 早川書房 Amazon 2020年に刊行されたミステリーで、著者は本作がデビュー作だそうです。 アメリカ大統領選の直前、CIAが大統領の許可なくシリアの化学兵器研究所を襲撃したが、失敗に終わり…

山陰紀行2 ~至極の日本庭園~

島根のアートといえば、足立美術館でしょう。日本庭園の素晴らしさはあまりに有名で、ここも今回初めて足を運ぶことができました。 足立美術館は、実業家の足立全康が1970年に創設したものです。横山大観のコレクションは圧巻で、近年は魯山人の数々のコレク…

山陰紀行1 ~出雲の神々~

神話の中心舞台である出雲には一度足を運びたいと思っていましたが、ようやく実現しました。 出雲地方は、古事記や日本書紀などの神話に登場することで知られていますが、実際に神話に登場する数々の神社が現存しています。そして、歴史的な背景が現代まで脈…

ダニエル・シルヴァ「教皇のスパイ」

教皇のスパイ 〈ガブリエル・アロン〉シリーズ (ハーパーBOOKS) 作者:ダニエル シルヴァ ハーパーコリンズ・ジャパン Amazon ローマ教皇が死亡し、コンクラーベによって次の教皇が選出される運びとなったが、その裏には、壮大な陰謀が張り巡らされていたとい…

「トップガン マーヴェリック」★★★★☆

「トップガン」といえば、スティーブン・スティーブンスのタイトル曲、ケニー・ロギンスの♪Danger Zone、ベルリンの♪Take My Breath Away、チープ・トリックの♪Mighty Wings等々、サントラがあまりにも印象的で、リアルタイムで観た者としては、続編を観ない…

佐藤究「テスカトリポカ」

テスカトリポカ (角川書店単行本) 作者:佐藤 究 KADOKAWA Amazon 久々にすごいミステリーに出会った気分です。メキシコ、インドネシア、そして日本に及ぶ壮大な舞台に展開される臓器売買というプロットに圧倒されます。メキシコの麻薬密売人が抗争に敗れてイ…

湊かなえ「告白」

告白 (双葉文庫) 作者:湊かなえ 双葉社 Amazon 今更ですが、湊かなえさんの作品を読んでみました。 中学校の教師の娘がプールで水死体で発見された。嫌疑をかけられた教師の教え子の2人の少年。教師は少年らの犯行を知りながら警察には伝えなかった。主犯格…

ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」

ザリガニの鳴くところ 作者:ディーリア・オーエンズ 早川書房 Amazon GWに読んだ小説です。ミステリーと呼んでいいのか迷うところですが、最後までぐいぐいと引き込まれる作品です。 カイアは湿地で暮らす家族の一番下の娘だったが、ある日、母親は家を出…

「ベルイマン島にて」★★★★

イングマール・ ベルイマン監督が暮らしたスウェーデンのフォーレ島を舞台にした作品です。北欧の荒涼とした美しい光景がとても印象的です。 トニーとそのパートナーのクリスはいずれも映画監督で、夏のひと時の滞在地として、ベルイマン監督が愛したフォー…

「三人の妻への手紙」★★★★☆

三人の妻への手紙 [DVD] FRT-047 カーク・ダグラス Amazon 1949年の作品です。 裕福な地域に住む3人の妻たちが、子供たちのピクニックをサポートするボランティアに参加するのだが、船に乗船する直前にアニーという女性からの手紙が3人の下に届く。その内容…

「CODA コーダ あいのうた」★★★★★

久々に純粋に涙腺をとことん刺激された作品です。 ストーリーは至ってシンプルですが、随所に観客の心を揺さぶる仕掛けが埋め込まれていて、最初から最後まで涙が流れっぱなしでした。 ある意味これこそ“The 映画”といえるかもしれません。 女子高生のルビー…

月村了衛「機能警察」

機龍警察〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA) 作者:月村 了衛 早川書房 Amazon 新年早々に読了したミステリーです。警視庁に「特捜部」という民間傭兵出身者などを集めた組織が設置され、近未来の二足歩行の戦闘装備である「龍機兵」を操り、敵と戦うというSF小説…

「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」★★★★

ダニエル・クレイグがボンドを演じる最後の作品とのことですが、ラスト・シーンがそれを象徴しています。 冒頭のシーンは、ノルウェーの雪深い場所の一軒家。幼いマドレーヌとその母親がいたところに、能面をかぶった男サフィンが襲いに来る。母親は殺害され…

濱嘉之「国境の銃弾」

警視庁公安部・片野坂彰 国境の銃弾 (文春文庫) 作者:濱 嘉之 文藝春秋 Amazon 濱嘉之氏の片野坂彰シリーズは最近はまっています。この作品は、片野坂シリーズの第一弾ですが、世界の政治情勢の独特な分析が登場人物の会話の随所に垣間見られ、とても刺激的…

「ドライブ・マイ・カー」★★★★

村上春樹氏の短編集「女のいない男たち」の中の『ドライブ・マイ・カー』と『シェエラザード』、『木野』の3つの短編のエッセンスが巧みに取り込まれた作品です。 3時間という長さの映画で、ストーリーも静かに淡々と進んでいくのですが、全く退屈すること…

「アフリカの女王」★★★★

アフリカの女王 [DVD] ハンフリー・ボガード Amazon 時は第一次大戦が始まる頃のアフリカ。英国人のローズ(キャサリン・ヘップバーン)は宣教師の兄とアフリカで布教活動をしていた。そこに、ドイツ軍の手が及び、村が破壊される。ローズの兄は失意の中で命…

オリンピック雑感

東京オリンピックが昨日終了しました。 コロナ禍という前代未聞の状況の中、最低限のオペレーションは無難に乗り切れたのではないかという意味では、関係者やボランティアの方々の尽力には敬意を表したいと思います。 本来であれば、東京オリンピックを観戦…

「武器よさらば」★★★☆

武器よさらば [DVD] ゲイリー・クーパー Amazon ヘミングウェイ原作のあまりに有名な作品です。今回鑑賞したのは1932年のフランク・ボーゼージ監督のバージョンです。 米国人でありながらイタリア軍に参加しているヘンリー(ゲイリー・クーパー)は、戦場で…

「女と男の観覧車」★★★★☆

女と男の観覧車 (字幕版) ケイト・ウィンスレット/ジャスティン・ティンバーレイク/ジュノー・テンプル/ジム・ベルーシ Amazon コニーアイランドを舞台にした恋愛コメディです。恋愛に翻弄されながら挫折や失敗を繰り返しつつ生きている人間模様をコミカ…

濱嘉之「紅旗の陰謀」

警視庁公安部・片野坂彰 紅旗の陰謀 (文春文庫) 作者:濱 嘉之 発売日: 2021/01/04 メディア: Kindle版 著者の本は初めて読んだのですが、国際情勢についてとても奥深い洞察が随所でなされ、それが壮大な結末につながっている、とても面白い作品でした。 主人…

西山圭太「DXの思考法」

DXの思考法 日本経済復活への最強戦略 (文春e-book) 作者:西山圭太,冨山和彦・解説 発売日: 2021/03/31 メディア: Kindle版 久々に目から鱗な衝撃を受けた大変刺激的な本です。 DXの本質を「レイヤー構造」というキーワードから読み取る分析と言ってもよい…

島田太郎・尾原和啓「スケールフリーネットワーク」

スケールフリーネットワーク ものづくり日本だからできるDX 作者:島田 太郎,尾原 和啓 発売日: 2021/01/08 メディア: 単行本(ソフトカバー) DX時代における日本企業のデータ活用戦略について、著者(島田氏)の所属する東芝の取組を中心に紹介されている…

夏野剛「誰がテレビを殺すのか」

誰がテレビを殺すのか (角川新書) 作者:夏野 剛 発売日: 2018/05/10 メディア: Kindle版 近年、ネット動画配信サービスが急拡大している中、テレビ局がこれからどのように生き抜いていくべきかについて述べている本で、大変興味深く刺激的な内容です。 著者…

「大いなる遺産」★★★★

大いなる遺産 [DVD] 発売日: 2019/01/08 メディア: DVD ディケンズのあまりに有名な小説がベースとなっていますが、これまで何度か映画化されてきているうちの、2012年に制作された作品を鑑賞しました。 田舎町で生まれ育ったピップは、姉夫婦に育てられ、将…