映画、書評、ジャズなど

ミステリー

レイモンド・チャンドラー「ロング・グッバイ」

ロング・グッドバイ フィリップ・マーロウ〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者:レイモンド チャンドラー 早川書房 Amazon 久々に読み直してみましたが、さすがによく練れているミステリーです。そして、何と言っても村上春樹氏の翻訳が読みやすく、グ…

佐藤究「幽玄F」

幽玄F 作者:佐藤究 河出書房新社 Amazon 著者の前作『テスカトリポカ』が素晴らしい作品だったので、この新作を手に取ってみました。 著者の謝辞によると、三島由紀夫の超音速戦闘機の搭乗体験記に強い影響を受けているようです。 主人公の透は戦闘機のパイ…

有栖川有栖「46番目の密室」

新装版 46番目の密室 (講談社文庫) 作者:有栖川有栖 講談社 Amazon 主人公のミステリー小説家アリスと臨床犯罪学者の火村が登場するシリーズの第一作で、本格的なミステリーです。推理小説家の大家の家のパーティーに集まった関係者たち。その中にはアリス…

東野圭吾「クスノキの番人」

クスノキの番人 (実業之日本社文庫) 作者:東野 圭吾 実業之日本社 Amazon 会社を不当に解雇され、その腹いせに犯罪をしてしまった主人公玲人が、親族からクスノキの番人を指示される話です。クスノキには、多くの人たちが祈念にやってくるが、それがどういう…

真山仁「コラプティオ」

コラプティオ 作者:真山 仁 文藝春秋 Amazon 国民に人気のある宮藤総理と、それを支える秘書官の白石、そして宮藤を巡る特ダネ記事を狙う新聞記者の神林を中心とした政治ドラマです。 大震災後に一旦は後退した原発政策だったが、宮藤はその立て直しを画策す…

濱嘉之「天空の魔手」

警視庁公安部・片野坂彰 天空の魔手 警視庁公安部・片野坂彰シリーズ (文春文庫) 作者:濱 嘉之 文藝春秋 Amazon 警視庁公安部片野坂彰シリーズの最新刊です。 中台関係の緊張が高まる中、片野坂のチームはドローンを用いた「対日有害活動の排除」を計画。片…

浅田次郎「シェエラザード」

シェエラザード(上) (講談社文庫) 作者:浅田次郎 講談社 Amazon シェエラザード(下) (講談社文庫) 作者:浅田次郎 講談社 Amazon 戦時中に多くの民間人を乗せたまま沈没した弥勒丸を引き上げるプロジェクトを巡る物語です。 大手金融機関を辞めた軽部と元…

東野圭吾「白夜行」

白夜行 (集英社文庫) 作者:東野圭吾 集英社 Amazon これまで東野圭吾さんの作品で読んだことがあるのは、『容疑者Xの献身』のみでしたが、この『白夜行』も大変素晴らしい作品でした。 大阪の廃墟ビルで質屋の社長が死体となって見つかる。容疑者として疑わ…

真山仁「ハゲタカ」

新装版 ハゲタカ 上下合本版 (講談社文庫) 作者:真山仁 講談社 Amazon 前から読みたいと思っていた作品ですが、やっと手にしました。 一言で言えば、素晴らしいとしか言いようがありません。その時代の肌感覚がよく描かれていますし、豊富な金融の知識が埋め…

米澤穂信「Iの悲劇」

Iの悲劇 (文春文庫) 作者:米澤 穂信 文藝春秋 Amazon 住民がいなくなった地方の集落に移住者を募る市役所職員の話です。いくつかのエピソードから成っており、最後に裏が明かされるという構成です。 主人公の万願寺は、市の甦り課で、移住者のケアやトラブ…

小川哲「嘘と正典」

嘘と正典 (ハヤカワ文庫JA) 作者:小川 哲 早川書房 Amazon 小川哲氏といえば、最近「地図と拳」で直木賞を受賞されたことで話題ですが、この作品は短編集です。 「魔術師」は、伝説的はマジシャンとその娘の話。マジシャンの父はタイムマシンというマジック…

カルロス・ルイ・サフォン「天使のゲーム」

天使のゲーム 上 (集英社文庫) 作者:カルロス・ルイス・サフォン 集英社 Amazon 天使のゲーム 下 (集英社文庫) 作者:カルロス・ルイス・サフォン 集英社 Amazon ルイ・サフォンの『風の影』の続編です。前作と同様、バルセロナを舞台にした小説で、「本」を…

バリー・ランセット「トーキョー・キル」

トーキョー・キル 私立探偵ジム・ブローディ (ホーム社) 作者:バリー・ランセット 集英社 Amazon 私立探偵ジム・ブローディを主人公とするシリーズの2作目です。 東京を中心に横浜中華街、フロリダ、さらにはバルバドスへと舞台が展開していく壮大なミステリ…

黒木亮「カラ売り屋vs仮想通貨」

カラ売り屋vs仮想通貨 (角川書店単行本) 作者:黒木 亮 KADOKAWA Amazon どこかの企業の株価を下げることで儲けを得ることを生業とするカラ売り屋の攻防を描いた3つの短編集です。 「仮想通貨の闇」は、仮想通貨業者とカラ売り屋との攻防を描いた作品です。…

米澤穂信「満願」

満願(新潮文庫) 作者:米澤穂信 新潮社 Amazon 2014年に刊行された短編ミステリー集で、ミステリー賞3冠に輝いた力作です。 「夜警」は、交番に配属された新人警官の話。犯人に発砲したものの自らも刺されて殉職する。正義感に駆られての行動にも見られた…

荒木あかね「此の世の果ての殺人」

此の世の果ての殺人 作者:荒木あかね 講談社 Amazon 今年の江戸川乱歩賞に審査員全員一致で選ばれたミステリー作品です。 著者は23歳での受賞ということで、本作品がデビュー作です。 小惑星が熊本県に間もなく衝突して地球が滅亡することが明らかな世の中を…

月村了衛「土漠の花」

土漠の花 (幻冬舎文庫) 作者:月村 了衛 幻冬舎 Amazon ソマリアに派遣された自衛隊を取り上げた作品です。 PKO活動で派遣されたにもかかわらず、現地の部族間闘争に巻き込まれてしまい、自衛隊史上初めて、武力行使による死者を出したという設定です。 ソ…

カルロス・ルイス・サフォン「風の影」

風の影 (上)(下)巻セット (集英社文庫) 集英社 Amazon バルセロナを舞台にしたとても味わい深い作品です。 バルセロナの古書店主の息子ダニエル少年は、父親に連れられ、「忘れられた本の墓場」に行く。そこで偶然手にしたのが、フリアン・カラックスという…

中山七里「護られなかった者たちへ」

護られなかった者たちへ 作者:中山 七里 NHK出版 Amazon 生活保護を巡るトラブルに起因する殺人事件を扱った作品です。 福祉保険事務所の関係者2人が次々と餓死という残虐な手法により殺害される。いずれも恨みを買うような人物ではなかった。2人は生活保護…

逢坂剛「百舌の叫ぶ夜」

百舌の叫ぶ夜(百舌シリーズ) (集英社文庫) 作者:逢坂剛 集英社 Amazon 逢坂剛氏の作品は初めて読んだのですが、とても巧妙に作られたミステリー作品でした。百舌シリーズの第2弾です。 能登半島で記憶喪失の男が発見される。その男は、ヤクザの関連する会…

手嶋龍一「武漢コンフィデンシャル」

武漢コンフィデンシャル 作者:手嶋龍一 小学館 Amazon 元NHKの著者による作品です。 武漢と香港を結び付ける女性実業家、オックスフォード卒業生のインテリジェンス・ネットワークを効果的に物語に生かしつつ、コロナの発生源の謎が解明されていく作品と…

月村了衛「欺す衆生」

欺す衆生 (新潮文庫) 作者:月村 了衛 新潮社 Amazon 機龍警察シリーズがとてもスリリングで面白かったので、著者の本作品を読んでみたのですが、これがまたとてもよくできていて大変面白く、あっという間に読み通してしまいました。 この作品は、かつて日本…

ドン・ベントレー「シリア・サンクション」

シリア・サンクション (ハヤカワ文庫NV) 作者:ドン ベントレー 早川書房 Amazon 2020年に刊行されたミステリーで、著者は本作がデビュー作だそうです。 アメリカ大統領選の直前、CIAが大統領の許可なくシリアの化学兵器研究所を襲撃したが、失敗に終わり…

ダニエル・シルヴァ「教皇のスパイ」

教皇のスパイ 〈ガブリエル・アロン〉シリーズ (ハーパーBOOKS) 作者:ダニエル シルヴァ ハーパーコリンズ・ジャパン Amazon ローマ教皇が死亡し、コンクラーベによって次の教皇が選出される運びとなったが、その裏には、壮大な陰謀が張り巡らされていたとい…

佐藤究「テスカトリポカ」

テスカトリポカ (角川書店単行本) 作者:佐藤 究 KADOKAWA Amazon 久々にすごいミステリーに出会った気分です。メキシコ、インドネシア、そして日本に及ぶ壮大な舞台に展開される臓器売買というプロットに圧倒されます。メキシコの麻薬密売人が抗争に敗れてイ…

湊かなえ「告白」

告白 (双葉文庫) 作者:湊かなえ 双葉社 Amazon 今更ですが、湊かなえさんの作品を読んでみました。 中学校の教師の娘がプールで水死体で発見された。嫌疑をかけられた教師の教え子の2人の少年。教師は少年らの犯行を知りながら警察には伝えなかった。主犯格…

ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」

ザリガニの鳴くところ 作者:ディーリア・オーエンズ 早川書房 Amazon GWに読んだ小説です。ミステリーと呼んでいいのか迷うところですが、最後までぐいぐいと引き込まれる作品です。 カイアは湿地で暮らす家族の一番下の娘だったが、ある日、母親は家を出…

月村了衛「機能警察」

機龍警察〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA) 作者:月村 了衛 早川書房 Amazon 新年早々に読了したミステリーです。警視庁に「特捜部」という民間傭兵出身者などを集めた組織が設置され、近未来の二足歩行の戦闘装備である「龍機兵」を操り、敵と戦うというSF小説…

濱嘉之「国境の銃弾」

警視庁公安部・片野坂彰 国境の銃弾 (文春文庫) 作者:濱 嘉之 文藝春秋 Amazon 濱嘉之氏の片野坂彰シリーズは最近はまっています。この作品は、片野坂シリーズの第一弾ですが、世界の政治情勢の独特な分析が登場人物の会話の随所に垣間見られ、とても刺激的…

濱嘉之「紅旗の陰謀」

警視庁公安部・片野坂彰 紅旗の陰謀 (文春文庫) 作者:濱 嘉之 発売日: 2021/01/04 メディア: Kindle版 著者の本は初めて読んだのですが、国際情勢についてとても奥深い洞察が随所でなされ、それが壮大な結末につながっている、とても面白い作品でした。 主人…