Born to Be Blue [ ETHAN HAWKE, CARMEN EJOGO ] TRAILER
伝説のジャズ・トランぺッターのチェット・ベイカーを題材とした作品です。
チェット・ベイカーといえば、その甘いマスクとヴォーカルもあり、マイルス・デイヴィスらに並ぶ人気者に上り詰めながらも、生涯を通じてドラッグに溺れ、麻薬中毒と闘い続けたという壮絶で切ない人生を歩んだミュージシャンです。
作品中では、イーサン・ホークがチェットを演じており、実際にヴォーカルを披露しているわけですが、これがなかなか秀逸で、チェットの切ない雰囲気を非常によく再現しています。
冒頭、NYの名門ジャズクラブ「Birdland」にてチェットが演奏し、それを見ていたマイルスが「お前はまだ早い」と一蹴します。チェットはドラッグから足を洗ったということで、多くの人たちが再びチェットを支援していたものの、実はドラッグを捨て切れておらず、チェットはドラッグの代金を取り立てに来た密売人にこっぴどく殴られ、歯はボロボロになり、トランペットを吹けない体になってしまいます。
そんなチェットを献身的に支えたのは、チェットと映画で共演した女優の卵のジェーンです。ドラッグと闘うチェットのそばに寄り添うシェーンのおかげで、チェットは徐々にトランペットを吹けるようになっていきます。
やがて、チェットはディジー・ガレスピーの取り計らいで、NYの「Birdland」で再び演奏できることに。マイルスやシェーンらも見守る中での大舞台だったが、チェットは麻薬中毒を鎮める薬を切らしていた。ステージで演奏するために薬に手を出そうとするチェット。
結局、チェットは素晴らしい演奏を披露したのだった。ただ、薬の力を借りて。。。
この作品の中でひときわ存在感が際立つ演奏は、♪I've Never Been In Love Beforeでしょう。最初の方でチェットとシェーンがボーリングを楽しむ場面と、最後の大舞台での演奏の2回、この曲が登場します。
Chet Baker - Chet Baker Sings - 05 - I've Never Been In Love Before
チェットの名演といえば、♪My Funny Valentineが真っ先に思い浮かびますが、個人的には、この曲が最もチェットらしい切なさと脆さを醸し出していると思います。チェットが抱えている闇の深さを象徴しているように思います。
作品のタイトルにもなっている♪Born To Be Blueもなかなか味があります。
欲を言えば、チェットの生涯をもう少し早い時期から描いてほしかったというような気もしますが、ただ、これだけ波乱万丈な人生ですから、ある局面を切り取って描かざるを得なかったのも理解できます。
いずれにしても、ジャズファン必見の映画であることは間違いありません。